フェザータッチ・オペレーション
<番外編6>





放課後の校内は、何処か忙しない。
合同音楽会の開催まで、もう日が無いからだろう。 校内のあちこちから響いて来る楽器の音が、騒がしく、姦しく、否応なしに祭り気分を盛り立てている。
氾濫する音を拾う様に聞き取りながら、ギルベルトは渡り廊下を歩いていた。
音楽は好きだ。聞くのも、演奏するのも。尤も、あくまで趣味の範疇である。 音楽学校への編入の推薦が持ち上がった時に断ったのは、別にバイルシュミットの為だけではない。
不意に、際立つように鮮烈なピアノの音が、耳に飛び込んできた。
繊細で、華美で、しかし気品のある旋律に、ギルベルトは顔を上げる。 これは確か、オペラの課題曲か。それにしても巧いな。恐らくは音楽学校生による演奏なのだろう。 共に音楽会を開催する兄弟校は、過去に何人もの優秀な音楽家を育て上げた名門だ。 これだけのピアノの腕を持つ生徒がいても、不思議じゃない。
探すまでも無く、音の源は直ぐに判った。
中庭を挟んだ向こう側にある音楽教室が、ここからは丁度正面に見える。 目を細めて窺うと、音楽の教室窓の向こう、ピアノの前には、 眼鏡をかけた如何にも育ちの良さそうな横顔が見えた。 身につけている音楽学校の制服に、やっぱりな…と納得する。
学年は自分よりも上だろうか。 おっとりとした物腰、育ちの良さが窺える空気、やや線の細い、しかし整った品のある顔立ち。 そう言えば現在音楽学校には、歴代でも屈指であろうと言われる天才ピアニストがいると、女生徒達が騒いでいたな。 成程、あのお綺麗な顔じゃ、女共が喜ぶ訳だ。
ふん、と鼻を鳴らせた所で、ピアノが止まった。
演奏を終えて顔を上げたピアニストは、あちらに向かって頷く仕草をする。 どうやら教室には、彼以外にも誰かがいるらしい。
何やら会話を交わす様子。ピアノの音こそ聞こえたが、その声までは届かない。 しかし親しげで、そして何処か甘さを含んだ穏やかな空気が、離れたここまで伝わってくる。
何だよ、虫も殺さないような世間知らずなお坊ちゃんに見えて、ちゃっかり女はいるんじゃねえか。 あーあ、噂をしていた女共はショックを受けるんだろうな。
によっと笑いながら、さあて、お坊ちゃんのお相手はどんな女だ? 好奇心のままに首を伸ばすと、タイミング良く窓辺へと近づく影が見えた。
開けていた窓を閉めようと、窓枠に手を伸ばすその姿に、ギルベルトはぎょっと身を竦める。
窓の前に現れたのは、エリザベータだった。
彼女はこちらに気付いていないらしい。 ギルベルトが見た事も無いような柔らかい笑顔を浮かべながら会話を交わし、 そして開いていた教室の窓をきっちりと閉めた。
引かれたカーテン。もう、部屋の内側は見えない。
ああ、なんだ。そういう事かよ。
ギルベルトは舌打ちを一つ。ポケットに手を突っ込むと、背中を向けてその場を後にした。























広いホールを貸し切った煌びやかなパーティーの会場を、ギルベルトはうんざりした顔で歩いていた。
学校側が主宰するこの音楽交流会の慰労パーティーは、基本的に参加は自由である。 しかし数ヶ月とは言え、音楽会の為に共に力を合わせた生徒同士だ。 打ち解けた友情を楽しむ者も勿論、普段は接点の少ない他校との交流や、 ささやかなロマンスを期待する者も多く、実際には殆どの生徒が参加していた。
普段の制服姿とは違う、ドレスアップした学生達。 その目に馴染まない姿に視線を走らせながら、ギルベルトは目的の人物を探す。
実は、スーツや正装には慣れている。
高等部に進級した頃から、ギルベルトはバイルシュミットの仕事を手伝うようになっていた。 週末や長期休暇には、当主に付いてその仕事を学び、少しずつではあるが、既に助手として実務を補佐している。 そんな中、当主の付き添いとして、正装姿で公的なパーティーに出席する事も度々あったのだ。
とは言え、正直この手の場は苦手であった。
これがバイルシュミットの外交であるというのなら、人脈確保と情報収集、 それに礼節の為にも必要であると割り切ることもできよう。 しかし、たかが学校行事の慰労会にまで、敢えて自ら参加する気にはなれない。
だから自由参加に託けて、ギルベルトは不参加を決め込むつもりだったのだが。
「…くそ、親父め」
ちっと舌打ちを漏らす。
髪をかき混ぜようと頭に手を乗せ、きちんと撫でつけたそれに気付き、止めた。 その代わりに、盛大に溜息をつく。
大事だとは思うが、極力避けたい…そんなこちらの心情は、しっかりと親父には見抜かれていたらしい。 今回のこの音楽会の慰労パーティー開催に当たって、ギルベルトは親父から一つの課題を提示された。
誰でも構わない。このパーティーで自分から女の子を誘って、ダンスをしろ。
によによ笑いながら言いつけられたそれに、ギルベルトは頭を抱えたくなった。
確かに、これからバイルシュミットの事業を手伝う様になると、 こういったパーティーに参加する機会は更に増えてくる。 嫌いだ、苦手だ、苦痛だと、避けるだけでは解決しない。
要は慣れだ。本気で駄目だというのなら、それをかわす方法も自分で習得しなければなるまい。 親父の出した課題は、つまりそれを指しているのだろう。


それを告げられた時。
真っ先にギルベルトの頭に浮かんだのは、エリザベータだった。


何せ彼女とは、寄宿学校に入学した頃からの付き合いだ。 しかも、偶然にも今までずっと同じクラスという、妙な腐れ縁でもある。 何だかんだと言い合う間柄ではあるが、互いに気安い仲であることは間違いない。
基本的に女が苦手なギルベルトにとって、エリザベータは異性を意識する必要の無い、数少ない相手でもあった。
出会ったばかりの頃のエリザベータは、まだ成長期前でもあり、 彼女も彼女で自分で女を意識していない節があり、 制服のスカートを着てさえいなければ、男だと勘違いしても不思議は無かった。 やや優等生っぽい辺りは鼻につくが、それでも下手な馬鹿より全然男気があり、付き合い易く、 ギルベルトは彼女を気に入っていた。別の言い方をすれば、一目置いていた。
そんな彼女が、妙に女臭く立ち振舞う様になったのは、いつ頃からだろうか。
束ねていた髪を下ろし、男言葉を潜めるようになった彼女に、ギルベルトは悉く違和感を感じていた。 今まで俺が見ていたあれが、お前の本来の姿じゃねえの?何、意識してんの?馬鹿じゃねえの?
だからあの日、そう告げたのだ。
中途半端に金と権力を知っている馬鹿は、陰湿で、加減を知らない奴が多い。 この金持ち学校には、そんなどうしようもない輩がごろごろといる。 自分と同様貴族の出身ではない彼女は、その辺りに酷く疎かった。 本人の自覚以上に理不尽なやっかみを受けている事に、殆ど気付いていない。 ギルベルトにはそれが危なっかしくて、見ていられなかった。
馬鹿は単純だ。挑発をすれば、怒りの矛先は単純にこちらへと逸れる。 牽制はしておいたが、しかし、一人で倉庫へ向かう彼女に、やや不安を感じて追いかけた。
大丈夫かよと倉庫を覗いた時、鏡の前でドレスを当てる彼女に告げた言葉に、悪意は無かった。 馬鹿な奴らの馬鹿な言葉なんか気にするべきじゃない。 男とか女とかじゃなく、お前はお前だろ。そう伝えるつもりでの言葉だった。
「あのさあ…おまえ、無理すんなよ」
しかし、彼女はそう取らなかったらしい。
一瞬見開いた目は、確かに傷ついたものであった。





ちぇっ、いねえじゃねえか。溜息をついてギルベルトは肩を落とす。
あれから、一度も彼女と話はしていなかった。 避けていた訳じゃない。音楽会の開催が近く、互いに忙しかったからだ。
尤も、彼女がパーティーに参加すると確認した訳じゃない。華やかな場は苦手だと言っていた気もする。 ドレスを着た事無いと言っていたし、タキシードで参加すりゃいいじゃねえかと言ったら殴られたっけ。
あいつなら、本気でタキシードで参加しそうだな。しかも似合いそうだし。まあ、それはそれで面白いかもな。 でも、タキシード姿の女にダンスを申し込む図って、どうなんだ?想像し、軽く肩を竦めた。
そして何気なく振り返った所で、すぐ傍にいた人影に、どん、とぶつかった。
「あ、すいません」
「わりぃ。こっちこそ…」
謝罪しながら顔を合わせ、お互いは一瞬ぽかんとした。
豊かな髪を綺麗にまとめ上げ、ほんのりと化粧を施し、鮮やかなローズピンク色のドレスを纏い、 きらきらと光を受けるアクセサリーを身につけているのは、紛れもないエリザベータだった。
見慣れない予想外のその姿に、ギルベルトは呆気に取られたまま、まじまじと不躾な視線を向ける。 そして、それはお互い様だったらしい。彼女も彼女で、見慣れないこちらの正装姿に目を瞠っていた。
先に立ち直ったのは、エリザベータであった。
呆然と見遣るギルベルトに、何を勘違いしたのか、きりっと目を吊り上げて睨みつけて。
「…笑ったら、吹っ飛ばすぞ、てめえ」
凄んで見せる彼女に、むっと唇を尖らせる。
「別に笑いやしねえよ」
そんなつもりで見てたんじゃねえっつーの。 思わず声を上げるギルベルトに、つん、とエリザベータはそっぽを向いた。
そりゃあ確かに、顔を合わせれば喧嘩ばかりしてしまう仲だ。しかし、そこまで警戒する事無いんじゃねえの? 不機嫌に顔をむくれさせたまま、ちらりとギルベルトは彼女に視線を向けた。
…こいつ、こんなに女っぽかったんだな。
細い項とか、しなやかな体の線とか、華奢な肩とか、柔らかそうな肌とか。 今まで知っていると思っていたそんな部分に気が付き、そんな自分に思わず視線を彷徨わせる。
出会った頃のエリザベータは、まるで男そのものだった。 口調に女らしさは微塵も無く、平気で男子生徒相手に喧嘩をしていて、しかも強かった。 気が強く、正義感もあって、さっぱりしていて、男よりも男らしくて、あけすけな笑顔が眩しかった。
でも、そうだよな。
俺もこいつも、もう出会った頃の餓鬼ではない。
それが寂しいのか、そうでないのか。ただ、奇妙な感覚が、しこりのように胸の奥にわだかまる。 あー、ったく。何考えてんだ、俺様は。
兎に角。
親父には逆らえない。言いつけられた約束だけは、実行しなくてはならない。 一曲だけ踊れば良いのだ。そう自分に言い聞かせ、こちらに横顔を向けるエリザベータに口を開いた所で。
「―――あっ」
ほんのり桃色に染まった唇から小さく零れた声音の儚い響きに、ギルベルトはどきりとする。 それに言葉を遮られた次の瞬間、エリザベータは駆け出した。
振り返りもせずに、一心に向かうその先。
「あいつは…」
タキシードを慣れた様子で着こなした、生粋の貴族の生まれを滲ませた、品のある容貌。 いつか音楽室で見かけた、あのお坊ちゃんだった。
駆け寄るエリザベータに、穏やかに微笑み、二、三言葉を交わすと、 スマートな仕草で彼女にお辞儀をして、手を差し出す。
同時に、音楽が変わる。
軽やかなその曲が流れた途端、浮き足立つように会場内がざわめいた。











彼が貴族の名門、エーデルシュタイン家の後継者である事を知ったのは、この少し後であった。
そして、エーデルシュタイン家が経営難に陥り、 バイルシュミット家が出資をしていると知るのは、更にもう少し後になる。









































そして、今。





会場は華やかに賑わっていた。 ざわめく人の波と独特の空気に、到着早々既にギルベルトは面倒くせえ…とうんざりする。
相変わらず、パーティーは苦手だ。 最近はこの手の社交の場はローデリヒに任せていたが、しかし今回の定例パーティーではそうは行かない。 仕方なしに参加したのは良かったが、隣に立つ仏頂面に、 もうとっとと帰りたいと思っているのは一人で無い事を悟る。
「…何で、私があんたなんかと…」
「仕方ねえだろ」
苦々しく言い放つエリザベータに、唇を尖らせて返す。 きりっと険を含んだ目を向けられると、ついこちらも喧嘩腰になってしまうのは、最早習性だろう。
こちとら一人楽し過ぎる未婚の身だ。身近にいる異性なんて、残念ながら一人しか見あたらない。 ああ、俺様、一人楽しすぎるぜ。 心の中で呟きながら、お互いパートナーとは言い難い視線の明後日ぶりで並んで歩く。
正式な場に倣い、エリザベータも華やかなドレスで着飾っていた。 その姿に、ギルベルトは目を細める。
「なによ」
「おまえも、そんなカッコしていたら、女に見えるな」
口の悪さに自覚は無い。言った当人に深い意図はなかったが、彼女の癇には触ったらしい。 アーモンドアイをきりりと吊り上げる様子に、慌ててギルベルトは首を横に振った。 流石にこんな公的な場で、彼女の鉄拳を食らいたくはない。
「馬鹿、褒めてんだよっ」
その弁明に、エリザベータは少しばかり驚いたように目を丸くした。まるで予想外の言葉であったらしい。 何か裏でもあるのだろうか。怪訝そうに向けられる視線に、言葉通りだっつーの、とギルベルトは吐き捨てた。 余程、自分はこの女から信用されていないらしい。ま、もう良いけどよ。
「…あんたも、そんなカッコしていると、当主らしく見えるわね」
今日のギルベルトは、普段は無造作な髪を、きっちりとオールバックにしていた。 そうするだけで、ひどく大人びて見える。
はあ?何言ってんの、お前。 言外にそう告げる怪訝そうなこちらに、何処か拗ねたようにエリザベータは睨みつけた。 今のあんたと同じ事を言っただけじゃない。
「褒めてんのよ、馬鹿」
大体、この男は普通にしてさえいれば、それなりに見栄えのする容姿をしているのだ。 中身はさておき、学生時代も本人の預かり知らない所では、何気に女生徒からの人気は高かったのである。 あくまで、中身はさておいて、の話だが。
溜息を一つ。こんな時だから、ついでに言っておくわ。
「…あんたには感謝しているのよ」
取ってつけたようなそれに、ギルベルトははあ?と柄の悪い声を上げた。 それを苦々しく、そして勝気な瞳を少し伏せて。
「ローデリヒさんを…エーデルシュタイン家を、助けてくれて」
古くから縁があり、いろいろ恩義のあるエーデルシュタインの家族は、エリザベータにとっても大切な人々だった。 バイルシュミットの出資が無ければ、ギルベルトの助けが無ければ、成す術もなく没落していただろう。
ローデリヒが音楽の天才である事に疑いは無いが、それを商才に生かせるとは思えない。 貴族育ちでおっとりした彼に、事業経営が向かないであろう事はエリザベータも感じていた。
最初、出資元から合併の話があるとの話を聞いた時、エリザベータはかなり不信感を抱いていた。 しかし、その相手がギルベルトであると知った時は正直驚いたと同時に、妙に安心もした。
「あんたなら、何とかしてくれるって思ったのよ、私」
ギルベルトが意外に義理堅く、面倒見が良く、損得だけでは無い部分がある事を知っている男だから。
だから、ローデリヒと共に、バイルシュミットにやって来た。 自分の出来る事で、少しでも力になりたいと思ったのだ。ローデリヒの為にも。 恩義のあるエーデルシュタインの為にも。そして大切な人達を助けてくれた、バイルシュミットの当主の為にも。
姿勢を正し、真正面から面と向かって告げる言葉。
「本当に、ありがとう」
あんたがいて、本当に良かった。一応、本気でそう思っているのよ。
一瞬、ギルベルトは表情を無くす。だが、数拍の間を置くと、悪戯小僧のようににやりと笑った。
「ま、小鳥のようにカッコいい俺様を、もっと尊敬しろよ」
あれだな。 格好良くって、頭も良くって、才能溢れる最強の俺様だからこそ、この程度の問題も何て事無くこなせるんだよ。 てか、大体今更、お前がそんなしおらしい事言ったって、気持ち悪いだけだっての。
偉そうに胸を反らせて腕を組み、ケセセと笑い飛ばすギルベルトを、エリザベータは半眼で睨みつける。 ああ、やっぱり言わなきゃ良かった。なんでこの男は、こうもどうしようもなく人を苛つかせるのか。
眉間に皺を寄せ、こめかみを指先で押さえた所で。
「…悲しませたくなかったしな」
しょうがねえだろ。自分に言い聞かせるような、小さな呟き。
えっと思った瞬間、流れる音楽が変わった。
「この曲…」
音楽に意識が攫われ、エリザベータはオーケストラへと視線を向ける。 だから、今の言葉をギルベルトがどんな顔で言ったのか、判らなかった。
軽やかで可愛らしい音楽に、ふわりとエリザベータが笑う。柔らかく眼を細め、ふふっと肩を竦めた。
「懐かしいわね、この曲。合同音楽会のパーティーで流れてたのよ」
「…踊るか」
すっと差し出される手に、エリザベータは目を丸くした。
珍しい。パーティーにさえ滅多に参加しようとしないのに。しかし、この男は意外にダンスが上手いらしい。 いつだったか、あの音楽祭のパーティーで彼と踊ったらしい同級生が言っていたっけ。
「合同音楽会後のパーティーでだったら、絶対にお断りなんだけどね」
「あのパーティーでだったら、俺だってこの曲でお前なんかを誘わねえよ」
その答えに、きょとんとした。
「あんた、知ってたの?」
この曲でダンスを踊る意味を。
「まあな」
音楽交流会の後のパーティーでこの曲でダンスを踊ったカップルは、恋を成就させ、幸せな結婚をするらしい。
二人の通った学校では有名なジンクスである。


エリザベータにとっては、ローデリヒと踊った曲だった。
ギルベルトにとっては、彼女を見送った曲だった。











確かに自分は彼女が好きだった。 彼女を認めていたし、放っておけなかったし、哀しい思いはさせたくなかった。 恋愛の定義は今を持っても良く判らないが、それらが当てはまるとするのなら、間違いなく恋だったのだろう。
互いのタイミングさえ悪くなければ、もしかするとどうにかなっていたのかも知れない。 そう思った時もあった。
しかし、今は違うだろうと確信している。
彼女の求めるものを自分は与えてやることはできないし、 自分が求めるものを彼女が与えてくれる人間でないことも知っている。
それに、たとえどうにかなっていたとしても、きっとエリザベータは最終的にはローデリヒを選んでいただろう。 そして、なんだかんだと、結局自分達の関係は、今と同じ形に収まるに違いない。





きっといつか。この思い出は、宝物のように心の奥に残るのだろう。
今感じている、この微妙な感情さえも包み込んで。





手のひらに乗せられたしなやかな指に、こそばゆさを感じながら、ギルベルトはひっそりと胸の内で苦笑した。




end.




個人的にこの二人の関係は
本人達にも判らない位曖昧なのが良いです
2010.12.06







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