弾切れになったマシンガンを投げ捨て、背後の気配を感じながら、全速力で走る。
遠くで響く、爆音と閃光。同時に兵士であろう複数の叫び声も聞こえた。予め仕込んでおいた、 トラップが効いたらしい。
しかしそれも単に「時間稼ぎ」に過ぎないもの。 たった一人で一部隊を相手にしているのだ、あんな小細工では、所詮時間の問題だろう。
負傷はしたが、どれも致命傷にはなっていない。大丈夫、まだ戦える。今はとにかく、 時間を稼ぐ事だけに集中するのだ。
出血が少しでも止まるよう、手の平で傷口を抑えながら、 青い空を見上げる。














英雄らしくなんて、死んでやるものか。






















Green Paradise




















「…あれえ?」
悟空は、そこに蹲る少女に瞬きをした。
その声に、 彼女はぎくりと身を震わせ、そしてそおっとこちらを振り仰ぐ。その姿に、 悟空は目を丸くして、もしかして…と声を洩らした。
「へえ…ほんとにいるんだなあ」
原住民から漏れ聞いた伝説。 昔からあるありがちな御伽噺かと思っていたが、どうやら丸っきりの虚実でもなかったらしい。
だって今目の前にいる彼女の姿は、紛れも無く彼らの話通りの姿。
でも。
「こんなとこにいてっと、危ねえぞ」
驚かせないようにゆっくりと近づくと、 脅えた瞳が睨みつけてくる。気丈に見える瞳の奥、ひた隠す恐怖の影が痛ましい。 硬く握り締めた拳が、小刻みに震えていた。
「…あれ、もしかしておめえ」
怖がらせないように、そおっとそおっと彼女の背中に手を伸ばす。
「怪我、してんのか?」
それ、に指先が触れる。
びくん、と彼女は肩を竦めた。
「うわっ、悪ぃ。痛かったか?」
過剰な彼女の反応に、むしろこちらの方がわたわたと慌てた。 そんな様子が可笑しかったのか、ほんの少しだけ、彼女の唇に笑みが浮かぶ。
そして。
小さな背中で震える白い翼が、ばさり、と大きく羽ばたかれた。
彼女の淡い色の唇からは、ちりり、ろろろろ、と鳥の囀りのような音が紡がれる。









二人が出会ったのは、森の中。
銃声と爆音が飛び交う、血生臭い密林の中だった。









ここは、戦場だった。
元は原住民しか住んでいない、密林の土地である。 しかし対立する大国に挟まれた地形が災いし、無関係な戦争の激戦地になってしまっていた。
「一番迷惑しているのは、おめえ達なんだよな」
兵士に支給された僅かな医療備品で、 悟空は彼女の翼に治療を施す。
恐らくは流れ弾に当たったのだろう。 彼女の綺麗な白い翼の付け根には、無残で痛々しい傷があった。その所為で、 どうやら翼を羽ばたかせる事も出来ないらしい。
「痛えか?」
無骨で大きな掌が、丁寧に彼女の翼を撫でる。
最も被害にあっているのは、 対立する二国ではなく、否応無く戦地になってしまった、 この森で生活を営んでいた原住民や動植物達だろう。原住民の大部分は、戦渦を避ける為に、 長年慣れ親しんでいたこの森を離れたと聞いている。しかし現状を把握できる人間はともかく、 動物や植物、ましてや彼女のような「存在」は、それさえも出来やしない。
おまけに、戦争をし合う二つの国は、互いを的としているので、 ある意味一対一の立場といえるだろう。だがここにいる人々は、 対立する二国の攻撃から身を守らなくてはいけないと言う、至極理不尽な立場に、 否応無く立たされている。
「すまねえな」
助けられた事が判ったのだろうか。 彼女は小首を傾げるように悟空を覗き込み、にこりと笑って小鳥のような声を零す。
「…言葉は、通じねのかな」
ぱちぱちと大きな瞳を瞬きさせ、彼女は「ちち」と囀った。











原住民から聞いた伝説がある。
この森には昔から、森を守る翼を持った神様が住んでいるらしい。 その守護神は、森の「力」を森に住む皆に送ってくれる。だからその「力」の為にも、 森に住み者たちは、森を大切に守らなくてはいけない。
何処にでも良くある伝承だ。
しかし昔話や伝承は、過去にあった自然現象や事件が元になっているケースが多く含まれるらしい。 彼女が伝説の森の神様かどうかは判らないが、 恐らくはこの伝説のモデルにされた種族か何かの一人なのだろう。











悟空は、彼女にチチという名前を付けた。











激戦区域にも関わらず、ここにいる兵士は悟空だけであった。
味方の隊員を全員ぎりぎりの境界線まで下がるように指示したのは、 部隊の隊長である悟空である。彼らには既に別の指令を与え、 その時までの待機命令を出していた。
「おらはな、傭兵なんだ」
ここで戦っているのは、国の為ではない。収入の為だ。
「これでもおら、勇者の称号を持ってんだぞ」
昔は一国の兵士だった。 大きな戦争で功績を上げ、勇者と賞賛されるまでの戦歴を持っている。
「勇者っつーてもさあ、単に沢山の人を殺しちまっただけなんだけどな」
へへ、と笑うそれは、酷く自嘲を含んでいた。
もともと、 子供の時からやたらと腕っ節が強かった。兵隊になったのも、その鍛えられた体が目を引いて、 スカウトされたからである。そんな単純な経緯の中で、それでも功績を残す事が出来たのだから、 多分兵隊という「仕事」は、自分に向いていたのだろう。
でも。
戦争を終えて祖国に帰って。自分が勝ち取った筈の戦いの無い平和な世界で、 自分は何一つ出来ないのだ。
平和の為に…確かにその為に、今まで戦ってきたはずだった。 戦に勝てば平和になると、皆信じていた。だから戦争中は「勇者」の能力は望まれ、求められ、 喜ばれ、尊敬された。
しかし平和になった世の中に、「勇者」は必要ない。
平和な場所では、自分は必要とされない。必至に死線を潜り抜け、戦争を終結させても、 その後の世界に自分の居場所は無いのだ。
戦争が長く続けばいい、 と思っている訳では決してない。ただ、ほんの少し寂しいだけ。自分の居場所が無くて、 何も出来ない自分が肩身に狭くて、身の置き場に困るだけ。
「ほら、戦場だったら、 おらの力は、みんなの為になるだろう?」
だから傭兵になった。戦場ならば、 勇者と湛えられた能力は、きっと役に立つ筈だから。
「おら、戦場でしか、 役に立たねえんだ」
そう呟く悟空を、チチは悲しそうに見つめていた。











包帯を取って、傷口を覗き込む。
完治までとはいかずとも、チチの背中、 翼の付け根にあった傷は、随分塞がっていた。これなら支障無さそうに見えるのだが。
「もう、飛べるか?」
促すように翼を撫でるが、チチはほんの少し動かしただけで、 直ぐに翼を折りたたんでしまう。そして、物言いたそうな視線を悟空に向けた。
「…もしかすると、力、が足りねえのかもな」
伝説では、森の神様はこの森の持つ精力を、 不思議な力に変換させるとか言っていた。今、戦争で荒れてしまっているこの森では、 そんな力が失われつつあるのかもしれない。
だとしたら、チチが空を飛べないのは、 ここで戦争をしている自分たちの所為だろう。
「すまねえな」
申し訳なく謝罪を告げる悟空に、チチは不思議そうに小首を傾げ、鳥の声で囁いた。
慰めるような響きを含むそれは、音楽にも似て耳にとても心地良い。つい口元を綻ばせると、 チチもにこりと笑った。
笑った顔が可愛いな、と思った。











一人でこの森の砦を守るのは、当然限界がある。その為、悟空は森の中にトラップを仕掛けていた。
やはり森の神様所以なのだろうか。不思議な事に、巧妙に張り巡らせた筈のあまたのトラップに、 チチが引っ掛かる事はなかった。
悟空は毎日、隠れるように作ったこの宿営地で、 無線で部隊と連絡を取り合ったり、武器や仕掛けたトラップの点検をする。
チチは、トラップのチェックに一緒について来る時もあれば、宿営地で悟空の帰りを待つ時もある。
宿営地に還ってきた悟空を、チチはいつも笑顔で出迎える。 ただいま、と言うと、おかえりの代わりにちりり、と鳥の声が返される。
誰かが待っている場所に帰ってくる経験を、悟空はこの森で初めて知った。











「おめえさあ、仲間とか家族とかのとこに、帰らなくていいのか?」
真剣な目で尋ねる悟空に、チチはにこりと笑った。チチが笑うと、ついこちらも釣られてしまう。 意味も無い笑顔を返し、かくりと首を落として、参ったなあと頭を掻いた。
チチは、悟空の傍にいた。傷が治って薬や治療が必要無くなっても、 そのまま悟空の傍を離れる素振りが無い。
今でこそ状況は落ち着いているが、 いつここが激戦区域になってもおかしくなかろう。そうなったら、 たとえ勇者と言われていても、流石にチチを守りきる自信は無かった。
仲間や家族がいるなら心配しているだろうし、ちゃんと返してやりたい。 チチに幾度となく聞いてみるのだが、囀りと笑顔を返すだけ。どうも、 こちらの言葉は通じていないようである。
「それともおめえ、一人ぼっちなのか?」
何と言っても、「森を守る神様」かもしれないのだ。ならば、仲間とか家族とか、 その当たりががどうなっているのかなんて、悟空には想像がつかない。
「あんま、おらの近くにいない方がいいんだけどなあ」
ぱちぱちと瞬きをするチチに。
「巻き添えなんか、食らいたくねえだろ」
真面目な顔でそう言って、自分のその言葉に苦笑した。
巻き添えなんて、今更か。 ここで戦争が始められた時点で、もう充分迷惑をかけてしまっている。
ならば逆に、 きちんと責任を持って、この森の神様らしきチチを守るのが、 本当の意味で、筋を通す事なのかもしれない。
うーんと腕を組んで考え込み、 目の前のチチをじいっと見つめた。暫し、お互いの目を瞬きしながら覗き込む。
「…ここにすっかな」
悟空が笑うとチチも笑う。
よし、決めた。
「ここを、勇者の死に場所にするぞ」



















「おらみたいになりたいって言った、子供がいたんだ」
―――大きくなったら、 貴方のような勇者になりたいんです。
戦場から帰還して、 勇者としての称号を与えられて間もない時だった。年端も行かない少年が、 憧れに瞳をきらきらさせ、悟空を見上げてそう言った。
穢れなく純真で真っ直ぐな瞳。それを見た時、悟空は決意した。
「勇者は絶対に、 子供が憧れるような死に方をしちゃ駄目なんだ」
憧れの対象になるような、 伝説に残るような、そんな最期にさせてはいけない。勇者と言う幻想を、 粉々に打ち砕かなくてはいけない。
「おら、人殺しなんだ」
戦争、 という大義名分さえなければ。場所と状況さえすりかえれば、 大量殺人犯とやっている事に違いは無い。
勇者とは、カッコ良いものでもなければ、 素晴らしい事でもない。それだけの殺人を犯した者に架せられた、茨の冠なのだ。
「呆気なく、カッコ悪く殺されたら、皆幻滅するだろ?」
勇者と言う幻想から。
だからずっと探していた。呆気なく、無残に殺される場所を。
「この森だったら、 おめえと一緒にいれそうだよな」
死んだ後も、ずっと傍に。
チチと一緒なら―――。









伝説など作らせない。
勇者らしくなど死んでやるものか。
人が人を殺す行為は、 勇ましいものでは決してない。
美化されて、一人歩きをする「勇者」の幻想は、 此処で終わらせてやる。














この森は、美しかった。
今は戦渦で荒れてはいるが、それでも木々は生い茂り、 花は咲いている。
「ここは楽園みたいだな」
傍に寄り添う人もいる、 離れる事無く傍にいる人もいる。
生まれて初めて自分を待ってくれる人に出会えたこの森で、 ずっとこうしていられたら。
それは限りなく、楽園に近い場所になるだろう。














だけど。
こんな日々が長く続いてはいけない。
終わらせなくてはいけないのだ。





























終わりは突然だった。
部隊との連絡用のドランシーバーからは、日に数度、 生存確認の連絡が交される決まりになっている。暗号を含めた常の遣り取りの中、 そのキーワードを耳にすると、悟空は全てを飲み込めたように、 此処に残ったありったけの武器を身につけた。
作戦内容は、既に決定、指示している。
きっと、敵は「勇者」と称された自分の情報を持っているに違いない。 ならば恐らく、かなりの兵力を集中させて、部隊殲滅に乗り出すはず。そうなれば、 悟空が一手に戦力を引き付ける事が出来る。
その隙を狙えば、悟空を除いた部隊員は、 密林に未だ残っている、無関係な原住民を、安全な区域へと送り届けることが出来るだろう。
それを実行できるチャンスが、とうとうやって来た。









ただ。
気になるのは只一つ。









「行くんだ、チチ」
間も無く、敵の軍隊がこちらへやってくる。 勇者を倒した功名を得る為にやってくる。
しかしチチは、戸惑う瞳で動かない。 悟空は、宥めるようににこりと笑った。
「判っている」
おめえの翼ははもう、空を飛べるんだろ。
翼の完治していたチチが、 悟空の傍にいてくれたのは、彼女なりの優しさだろう。否、もしかすると、 寂しかった自分の心が無意識の鎖となり、彼女の心を引きとめていたのかもしれない。
しかしそれも、ここまでの事。
「おめえは、この森で生きるんだ」
森を守り、森に住む皆を守る、翼を持った森の神の原住民の伝説が本当ならば、 森の神が死んでしまっては、この森は二度と動植物の住む事が出来ない、 荒廃した土地へと成り果ててしまうらしい。チチが生きなくては、この森は死んでしまうのだ。
「行け、チチ」
チチは動かない。
悟空の腕にしがみ付こうと手を伸ばすが、その指先を、 悟空は乱暴な動作で振り切った。
そして、慣れた動きで機関銃をチチに向ける。 その銃口は、あくまで足下に照準を合わせていたけれど。
「行けっ」
強い口調にチチはびくりと細い肩を揺らせる。見据えられた瞳は、 今まで見せた事も無いほどに厳しい。
「おめえが行かなきゃ、 こいつをぶっ放す」
がしゃり、と重たい無機質な金属音を鳴らせる。
「おらは、おめえを撃ちたくねえ」
でも。このまま、傍から離れないならば。
「おらにこいつを撃たせねえ為にも、行ってくれ」
そうして。
おめえは、おらが死んでもこの森で生きるんだ。



















密林の中を、悟空は走った。
目的は、敵兵の殺戮ではなく、混乱である。 この森に居るのは悟空一人でなく、傭兵部隊が潜んでいると惑わし、 戦闘の注意を引きつける。こちらがたった一人でいる事は、まだ悟られてはいけない。
トランシーバーに、第一連絡が入る。原住民の避難が始まった。
小細工を駆使したゲリラ戦は、こちらの存在と人数を撹乱するのに、かなり功を得ている。 森のあちこちで上がる爆音と悲鳴の様子から、当初の予想以上の個隊が、 この森に送り込まれたようだ。
第二連絡が入る。国境付近まで到着。
弾切れの銃を全て捨てた為、身は随分軽くなった。仕掛けたトラップは、 もう殆どが使い物にならなくなっている頃だろう。強まった警戒心が、 逆に足止めになっているのは幸いかも知れない。
第三連絡が入る。 第三国の救助隊と接触。
負傷は、足と腕に兆弾が掠った傷。あと、 撃たれた肩は貫通しているか。
時折視界が遠のくのは、多分失血の所為だろう。 息が上がっていると自覚してから、もう随分と時間が経っている。でももう少し、 あともう少し。
第四連絡が入る。ミッションクリア。


部隊解散。
最期の暗号連絡が、トランシーバーから流れた。


酷使した膝が笑っている。出血のあった腕の感覚は、もうとっくに無くなった。 指先は麻痺して、こんなに汗が出ているのに、何故だろう、体だけは妙に寒い。それでも、 結構頑張った方かな。たった一人でここまで、複数の部隊を相手にしたのだから。
ふらふらとした足取りで、道無き道をひたすら踏みしめる。乾ききった喉はぜえぜえと痛み、 ぼろぼろになった体は鉛の様に重い。
でももう。
そろそろ全部、 終わっちまってもいいかもな。
作戦は終了。部隊は解散。もう、 悟空の指示を必要とする部隊は無い。
やる事は全てやったし、 もう思い残す事もない。直ぐ傍まで迫り来る、殺気を帯びた気配。 それを振り切れるだけの力は、もう自分には残されていないだろう。
朦朧とした頭に、チチの姿が過ぎった。
銃口を向けた時を思い出す。 もしかすると、裏切られたとでも思われたかもしれないな。そう思われても仕方なかったが、 ただ、最期に見た彼女の顔が、酷く悲しそうな表情だったのが、心に小さな棘を残した。
この森で死んだら、チチは自分の亡骸を見つけるだろうか。もしかすると、森の土に還り、 森の木々の養分となり、そのまま森の神であるチチの力になるのかもしれない。 そしてきっと。この森全てと同じく、チチの一部になるのだろう。そう思うと、 心が慰められるような気がした。
くすりと笑うと同時に、銃声が響いた。
はっと悟空は振り返る。思った以上に追っ手部隊は近くに来ているようだ。もしかすると、 こちらの姿を確認されたかも知れない。
上体を低くして、息を飲み込みながら、 引きずるように足を速める。獣道さえ見当たらない密林の、うっそうと茂る木々が、 ふと途切れた。
その足下には、底さえ見えない断崖絶壁。
何と言う、 あつらえ向きのシチュエーションだろう。悟空は皮肉に笑った。
さて。
もうそろそろ、全部終わっちまってもいいかもな。
そう思って振り返った瞬間、 衝撃と共に、耳の直ぐ横を銃弾がすり抜けた。
ぐらりと足下が揺れる。
やべえ。そう思った時、視界は澄み渡る、真っ青な空だけを映していた。


鳩尾から、力が抜けるような浮遊感。
気が遠くなるような落下に、 やっとこの瞬間がやってきたのだと、微笑みながら瞳を閉じようとした―――その直前。









ばさりと、包み込むような真っ白い翼が、目の前に広がった。



















羽ばたく翼の白さに圧倒される。
綺麗だな、と思った。ああ、こんなに綺麗なものが、 この世にはあるんだと思った。
「チチ―――」
失血で気の遠くなる意識。 涙を溜めた大きな目が、真っ直ぐにこちらを映し出している。














差し出された白い手。
悟空は、それに手を伸ばした。



















それは、生物としての本能なのかもしれない。世の中に疲れて自殺を模索する者が、 いきなり刃物を突きつけられれば恐怖に怯えた表情を見せるのと同じく、咄嗟の反射としての。
何も無かったはずなのに、ずっと心に決めていたはずなのに。 こんな土壇場で、自分の命に執着する無様さに、涙が出るほど滑稽だった。
このまま生き延びたとて、何が待っている訳じゃない。
判っている。
判っているはずなのに。
























それでもその瞬間。
確かに勇者は「死」よりも「生」を選んだ。
























end.




アブラハムの子供たちに
世界に一つだけの花を
2003.05.09







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