サクラクラフト
<9>





 ちん、と音を立てエレベーターが止まる。頭上のランプが上昇を示しているのを確認し、エリザベータは扉の前へと進んだ。 左右に開く扉に一歩踏み込み、そこでぱちりと瞬きする。
「あら」
「よお」
 既に先客として乗っていたのは、同じ会社に入社した、同期の腐れ幼馴染であった。 軽く目を瞠りつつ片手を上げてくるのはまあ良いが、何故エスカレーターの中なんかでコンビニおにぎりを頬張っている? 思わず、露骨にしかめっ面になった。
「ちょっとあんた、行儀悪いわね」
 こんな所で、なに食ってんのよ。半眼で睨みながら、エスカレーターのボタンを押す。扉が閉まり、ゆるり、上昇する感覚。
「仕方ねえだろ。朝飯、食いっぱぐれたんだよ」
 直ぐミーティングになるだろうから、多分昼までかかるだろうし、時間ねえんだよ。 慌てて家を出たから、飯食う暇なんかなかったし。腹は減っていたけど、買い物する時間も無かったし。 今さっきこっちに到着したから、漸く駅前のコンビニに寄れたんだっての。
「なによ、なんかあった訳?」
「ルッツが熱を出した」
 今、保育園で風邪が流行ってんのか? 近所の病児保育、何処も定員いっぱいでよ。空いている預け場所探しに、朝から大わらわだったぜー。 疲れた溜息をつく幼馴染に、思わずエリザベータは眉尻を寄せる。
「……あんた、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だっての」
 彼の事情は、勿論知っている。幼い弟を守りたい気持ちは察するが、しかしその年齢差を考えれば、殆どシングルファーザーのようではないか。
「ローデリヒさんも心配してんのよ」
「うるせーよ」
 じろりと睨み据える、特殊な色彩を湛えた瞳。 切れ長な目元と相成ってそれなりに迫力を担うのだが、しかし残念ながらそれに押される程、伊達に長い付き合いはしていない。
「他人がとやかく口出しすんな。これは、俺とルッツの問題だ」
「なに粋がってんのよ、馬鹿」
 別に、兄弟二人の生活に口出しするつもりはない。 ただ、変に構えて、何でもかんでも一人で背負って、片意地張る必要はないんじゃないかと言いたいだけだ。
「心配してんでしょ。あんた達の事を」
 親戚が集まる中で大見得切って、誰の世話にもならない、弟は俺一人で育てる、そう言い切った顛末は、ローデリヒから聞いている。 たった二人の兄弟が、日本とドイツ、遠く離れて生活することだけは、なんとしてでも避けたいのであろう。 しかし、男手ひとつで子供を育てることは、決して甘い話ではない。
「もう少し、誰かに頼っても良いんじゃないのって言ってんの」
 保育園への編入だって、結局一人で決めたそうじゃないか。 遠縁とは言え、同じ日本に滞在している親戚にさえ一言も無しですかって、ローデリヒさんはかなり怒っていたし、そしてすごく心配していたのよ。
「あんたがそんなんじゃ、周りだって、どう手助けしていいか解んないじゃない」
 誰にだって、出来る事と出来ない事があるんだから。 手伝いますよって言っているんだから、やりましょうかって聞いているんだから。 ムキになって意地張ってないで、そんな人の親切とか好意を、素直に受ければいいのよ。
「意地なんて張ってねえよ」
 大口でおむすびを頬張り、口の中のものを飲み込んで食べ尽くす。
 んなこた解っている。働きながら幼い弟を育てることが、決して甘くない事も。出来る事と出来ない事があることも。 正にそれにぶち当たったばかりだ――だから。
「手伝ってもらったり、とか、しているし」
 頼ったりとか、ちょっとばかり甘えたりというか、寧ろ甘やかしてもらったとかいうか。そんなつもりはなかったけど、まあ、そう……だな、うん。 もそもそとした声に、おや、と目を瞠る。
「そうなの?」
「……おう」
 拗ねたように唇を尖らせ、はにかむように視線を落としたその横顔。 しかし、なんだこの残念感。なんだこのムカつく感。 これが繊細そうな美青年だったり、危うげなメガネ男子だったらときめくと言うのにって、いやいや、今はそうじゃなくて。
「ひょっとして……恋人とか?」
 途端、ひくりと揺れるごつい肩。てか、大の野郎が頬染めんな、キモイ。
「あー、いや。恋人、とか……そんなんじゃねえ、けど」
 ちん、エスカレーターが止まった。開く扉に、ギルベルトが速やかに足を進める。その後をエリザベータが続いた。
「ちょっと。それって、ローデリヒさんは知らないわよね?」
「なんで、坊ちゃんにいちいち言わなきゃならねえんだよっ」
「当然でしょう、ルートちゃんに変な女が近付いたらどうすんのよ」
 なにせこいつは単純だ。巨乳に眩んで、ガイジンステイタス狙いの、頭と尻の軽い女にATMにされる典型タイプであろう。 こいつ一人が被害を蒙るのは全く構わないが、しかしルートヴィッヒはまだ幼い。 子供の成長と教育に問題があるような相手であれば、黙って見過ごしては置けない。
「あいつを変な女呼ばわりすんじゃねえよ」
 真面目で、気が利いて、料理が上手で、物腰が柔らかくて、家庭的で、しっかりしてて。 赤の他人に対しても、打算とか見返りとか関係なく、自分の事みたいに一生懸命になってくれる、すげえお人好しで優しい奴なんだよ。 何も知らねえくせに、お前マジ、失礼な奴だな。
「あんたってさあ。そんな所が、ホント相変わらずよね」
 子供の頃は、理想の女性をマリア像に見立ててたことあったけどさ。女性に対して、変な幻想持ち過ぎ。 呆れ顔ではあ、と溜息をつくエリザベータに、うるせえと吠える。それは俺が、今のルッツぐれえの歳の頃の話じゃねえか。
「てか、てめえ。ついてくんなっ」
 てめえの秘書課は、このフロアじゃねえだろうが。俺様のストーカーかよ。 並んで歩くエリザベータに、ぺぺっと唾を飛ばしながら酸っぱい顔で吐き捨てるが。
「私は総務に用があんのよ」
 なに勘違いしてんのよ、この自意識過剰が。あんたこそ、海外事業部はこのフロアじゃないでしょうに。 ふんと鼻を鳴らし、つかつかと足を速めて追い越すエリザベータに、ギルベルトは片眉を吊り上げて追い越し返した。
「総務だあ? 俺様の真似してんじゃねえよ」
「はあ? そんなの知る訳ないじゃない」
 意味解んないんだけど。うるせえ、とっとと自分の部署に行けよ。それはこっちの台詞でしょ。 大人気ない応酬のまま、睨み合いながら、押し退け合いながら、開放されたままの総務のドアを競歩で潜る。
 そして、正面のカウンターから身を乗り出して。


「本田っ」
「本田さん」


 えっ? はあ? 疑問符を頭上に、ギルベルトとエリザベータが顔を見合わせる。その耳に、はあいと届く、柔らかなトーンの声。
 ああ。はいはい、ただいま、直ぐ行きます。 向こうのパソコンデスクから立ち上がり、小走りにやって来る小柄な彼女は、カウンター向こうに立つ来訪者達に、穏やかな笑顔を浮かべた。
「すいません、わざわざ総務まで来て頂いて」
 おっとりと小首を傾げる彼女に、二人は同時に手と首を振った。
「いいのよ、こっちが取りに来るのが当然だもの」
「あ、いや、俺が寄りたかっただけだから」
 同時に重なる、それぞれの返事。
 しかし、聞いたことの無いような響きを乗せる幼馴染の声を、エリザベータは聞き逃さない。 我が耳を疑いつつ振り返ると、ギルベルトはしまったと顔を引きつらせていた。
 女の勘がぴこんと点灯する。あら、ちょっと。ひょっとして、こいつ、さっきの話。
 形容し難い微妙な空気に、目の前の彼女は、小動物のようにきょときょとと左右を見比べる。 もしかすると、どちらから話を聞けば良いのか判らず、戸惑っているのかもしれない。 エリザベータは殊更にっこり笑うと、さあどうぞ、スマートな仕草ですっと手で示し、ギルベルトに先を譲った。
 ちっと舌打ちする男から、笑顔を絶やさず一歩後ろに下がる。そしてポケットから携帯電話を取り出すと、とりあえずカメラアプリを立ち上げた。





「ルートヴィッヒ君、大丈夫ですか?」
 土曜日、結構歩きましたから。小さい子供なのに、無理をさせてしまいましたよね。 申し訳なさそうに眉尻を下げる彼女に、慌てて違う違うと首を振る。
「いや、それとは関係ねえよ」
 あれぐらいのお出掛けは珍しくねえよ。 熱を出したのは今朝だったし、大体子供は直ぐに体調を崩すし、それに、病児保育に預けた時には、殆ど平熱だったし……と、そこではたとギルベルトは瞬く。
「え、なんで知ってんだ? ルッツの事」
「カリエドさんから伺いました」
 朝、そちらの部署に伺った時に。熱を出したって。出社が遅れるって。病児保育に預けていらっしゃったとか。
 心配そうに見上げる彼女に、え? と声が上がる。その反応にえっ? と返される。不思議そうにお互いを見つめながら。
「あれ、ウチに来たのか? 今日? 海事に?」
「伝言。時間があれば庶務課にって。カリエドさんにお願いして」
 それで、こちらに寄って下さったと。あれ、違うんですか?
「いや、俺は、その、土曜日のお礼言いたくて」
 ルッツもすげえ楽しかったって喜んでいたし。あれから結構遅い時間まで引き止めちまっていたし。 出社して、部署に行く前に、先にこっちに寄ろうと思って。えっ? あれ?
 暫しお互いぱちくりと瞬き合い、数拍後、桜は小さく笑った。なんだ、そうだったんですか。
「バイルシュミットさんって、律儀ですね」
 そんな、お礼なんて。あの後直ぐに、メールで下さったじゃないですか。別れて直ぐと、帰宅した後と。 それなのにわざわざ、庶務にまで来て下さるなんて。真面目な人ですよね、バイルシュミットさんは。
 くすくすと笑み零す桜に、むず痒い顔でギルベルトは唇を尖らせた。


 かしゃ、と響く携帯電話のシャッター音。
「なにやってんだ、お前」
「ヘーデルヴァーリさん?」
「ああ、気にしないで」
 良いから。続けて、続けて。


「あ、ちょっと待ってて下さいね」
 失礼します、そう言い置いて、桜は背を向けて一旦自分の席に戻る。 小走りのまま戻って来ると、持って来た手提げ袋を、両手を添えて差し出した。
「はい、これ。どうぞ」
 なんとか仕上げてみました。サイズとか、形とか、種類とか。多分間違いはないかと思いますが、お家で確認しておいてくださいね。 もし、足りないものがあれば、また教えてください。生地も余っていますから、直ぐ作りますので。
 へ? 思わず、間抜けな声を上げる。
「え、まさか、これって……ええっ?」
「ルートヴィッヒ君、気に入って頂けると嬉しいのですが」
 保育園の通園グッズ、一式そちらに入っていますので。
「もう出来たのかよっ」
 ギルベルトは目を剥いた。
 だって、作ってもらうと決まって、生地の買い物に行ったのは土曜日だ。 一緒に夕飯を食べたから、その日は少し帰りが遅くなって。と言う事は、つまり日曜日に全部作って、月曜日の今朝、それを持って来たと言うのか。
「マジかよ……すげえ」
 信じらんねえ。たった一日で? ホントかよ。驚愕のままに受け取った紙袋の中を、ひょいと覗く。 丁寧に折り畳まれた幾種類かの見覚えのある布地の狭間、目に着いたそれにあれ? と手を差し込んだ。なんだ、これ。
 すっと取り出したのは、薄桃色の洋封筒が二通。何の気無しにギルベルトが封を開こうとすると。
「あ、それっ、駄目ですっ」
 きゃあと桜は声を上げると、重ねるようにギルベルトの手を押さえ、中に収められた手紙を開くのを防いだ。 そのまま袋の中に彼の手ごと押し戻すが、しかしカウンター越しに無理矢理身を乗り出すので、バランスが崩れて前のめりになる。 転がりそうな小柄な体を、危なげなくギルベルトが抱き留めた。
「手紙?」
 思わず込み上げる、実に嬉しそうなニヨニヨ顔。うう、桜は唇を噛み締める。
「ルートヴィッヒ君と、お二人に、です」
 作ったもののメモ書きと、ちょっとだけメッセージと。大したことは書いていません。
「なあ、読んで良い?」
「駄目ですっ」
「でも、一方は俺宛てなんだろ」
 だったら良いじゃねえか。にんまりと唇を吊り上げるギルベルトに、真っ赤にした顔で、そっと視線を逸らせ。
「は、恥ずかしいですっ」
 書いた手紙を目の前で読まれるなんて、恥かし過ぎて、居た堪れません。 家に帰ってから、ルッツ君と一緒に見て下さい。もう、お願いしますから。


 かしゃ、と響く携帯電話のシャッター音。
「なにやってんだ、お前」
「ヘーデルヴァーリさん?」
「ああ、気にしないで」
 良いから。止めないで、止めないで。


「……分かった」
 約束する。家に帰るまで読まねえよ。だらしなくにやけた顔のまま了解すると、ほっと桜は息を抜いた。 力が抜ける、細く華奢な体。ギルベルトは支えた腕に、そのままぎゅっと力を込めた。
「ダンケ。まさかこんなに早く出来るなんて思わなかったぜ」
 マジ、びっくりした。でもすっげえ助かった。流石だな。本田に頼んで、ほんっと良かったぜ。
 そこで漸く、桜は己の現状に気が付いた。これじゃあまるで、彼にしがみ付き、抱き締められているようではないか。 慌てて身を引き、姿勢を正す。あの、すいません。失礼しました。
「大袈裟ですよ、バイルシュミットさんは」
 そんなに褒められても困ります。それに、期待して頂いたのは嬉しいですが、寧ろがっかりさせてしまうかもしれませんよ。 恐縮そうに肩を竦め、酷く申し訳なさそうに苦笑する。 しかし、大袈裟なんてとんでもない。ギルベルトからすれば、本気で途方に暮れていた所に現れた、まさに救い主なのだから。
 眩しく目を細め、改めて受け取った紙袋を見下ろす。一番上に置かれているのは、先程取り出そうとした二通の封筒。 細く丁寧な字で、ギルベルトさんへ、と表に記載されているのが見えた。ギルベルトさん。バイルシュミットさんじゃなくて、ギルベルトさんか。 そうだよな、そう書かなきゃ、ルッツもバイルシュミットさん、だもんな。
「……なあ、やっぱり、ちらっとだけ見ても良いか?」
「駄目です」
 約束して下さいましたよね。お願いですから、ルートヴィッヒさんと一緒に見て下さい。ここで開けるのはやめて下さい。 もう、ホントに恥ずかしいんですから。
 赤くなった顔できりりと睨み、ほらほら、もう行って下さい、誤魔化すように強引にギルベルトの体の向きを変えさせると、その背中を押し遣る。 そんな力じゃ、マッサージにもなりゃしねえ。 小花を飛ばしつつへらへら笑いながら、ギルベルトはそのまま足を進め、一旦入り口で立ち止まる。
 そして桜を振り返り、滲むような笑顔を浮かべた。
「ホントにダンケ。ありがとう」
 本田のお陰で助かった。ルッツの奴も、きっとすっげえ喜ぶぜ。優しい笑顔に、釣られるように桜も微笑む。
「お役に立てたなら、嬉しいです」


 かしゃ、と響く携帯電話のシャッター音。
「なにやってんだ、お前」
「ヘーデルヴァーリさん?」
「ああ、気にしないで」
 良いから。そのまま、そのまま。





 庶務課の扉の向こうへ消える、実に晴れ晴れとした、機嫌の良い後ろ姿。鼻歌交じりのそれを、暫し見送って。
「すいません、ヘーデルヴァーリさん」
 お待たせしました。ぺこりと頭を下げる桜に、いいのよ、エリザベータは携帯電話をポケットにしまいながら、カウンターに寄る。
「えっと、あれですよね。出張の」
「ごめんね、本田さん」
 面倒な事をお願いして。突然出張が決まり、その諸々の手続きを、エリザベータは庶務課の、敢えて桜に直接依頼していた。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
 飛行機と、宿泊ホテルのチケット、持って来ますね。ホテルは、以前使ったところと同じ場所が取れました。 迷わないかとは思いますが、念の為ホテルと取引先の地図もプリントアウトしています。 一応簡単な日程表もありますので、一緒に入れておきますね。 保険の申請書も用意しているので、ついでにそちらの記入もお願いします。 それから、海外対応の持ち出し用モバイルが必要なら、すぐ出せるように用意していますよ。 あと、先方にお渡しする手土産も一応準備したのですが、どうしましょう、今日お渡ししておきましょうか。
「ありがとう、助かるわ」
 そうか、手土産、忘れるところだった。ほっとエリザベータは息をついた。矢張り彼女にお願いしておいてよかった。
 相変わらず、実に細かいところまで気を利かせてくれている。とりあえず、本田さんに任せておけば間違いない。 実は秘書課内では、暗黙にそう思われている節があるのだ。
「ちょっと待ってて下さいね」
 言いながら、ふふっと小さく笑う。普段から笑顔で対応してくれる彼女ではあるが、なにやら今日はにこにこが三割増しだ。 可愛らしいそれに、つられてこちらも笑ってしまうじゃないか。
「なあに? どうしたの」
「あ、いえ……ちょっと」
 零れる笑みを堪えるように、両手で軽く口元を抑える。そっと、ひそやかな声で。
「良かったなって、思って」
 喜んで貰えて。お節介だなって思ったけど。でも、良かった。嬉しいなって。


 かしゃ、と響く携帯電話のシャッター音。
「なに撮ってんのよ」
「えっと?」
「あー、気にしナイ、気にしナイ」
 良いカラ。良いカラ。本田サンも、ヘーデルヴァーリ姐サンも、cawaiiヨー。





 くすぐったそうに肩を竦め、くるりと背を向けて、ステップを踏むような軽い足取りで奥へと依頼されたものを取に行く。 その背中を眺め、エリザベータはふうんと軽く頷く。
 真面目で、気が利いて、家庭的で、しっかりしてて、お人好しで……何処の幻想妄想世界の理想の具現かと思いきや、確かにここにいたわよね、現代に生き残る絶滅危惧種のやまとなでしこが。 いつかおっぱいに騙されると思っていたが、しかしあの馬鹿は、意外に女性に対する鑑識眼は間違っていなかったらしい。
 お待たせしました。戻ってきた桜は、クリアファイルを手渡した。 中を取り出し、軽く確認する。地図に、コピーに、各種書類と、チケット。 クリップで止めて分類し、分かりやすいようにと附箋や蛍光ペンでチェックされている辺りは、流石彼女の仕事である。
 うんうんとエリザベータは頷いた。


「ホント、本田さんなら安心して任せられるわよね。仕事も、あの馬鹿も」








台湾ちゃんの人名を出すか否かにいつも悩みます
2015.03.07







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