フェザータッチ・オペレーション
<13>





にゃあ、と声がした。
書庫室のソファに座っていた菊は、 頭から二回りは大きな本から顔を上げた。黒い瞳をじいっと凝らし、本棚の角、 深みのある色の絨毯、アーチ型の窓の外へと視線を巡り、その気配を窺う。
気のせいだろうか。一度眉根を寄せ、改めて視線の本へと落とした所で、 ころんと転がる鈴の音色が届く。今度ははっきりと聞こえた。
顔を上げ、 ばふんと本を閉じる。身を沈めていた大きめのソファから、 お尻をもそもそさせて立ち上がると、音の聞こえたそちらへと向き直る。 確かこちら。書庫室の入り口の辺り。
連なる書棚に手を掛けて、音は立てず、 そおっと脚を忍ばせ、首を伸ばして、目だけを出して、呼吸さえも止めて。
ころころころ。また鈴の音。
瞬く黒い瞳の先にあるのは、廊下へと続く入り口の扉。 僅かに開いたままの、その細い隙間。
リズムカルな鈴の音と共に、 するりとしなやかな尻尾が通り過ぎた。











ギルベルトはこの男が苦手であった。
地中海の向こうにある、 強大な力を持つ国からやってきた彼―――サディク・アドナンは、 ソファの背凭れに身体を預け、肘掛に軽く頬杖をつき、 男臭い笑みを唇にへばり付かせてこちらを見ている。 仮面で目元を覆っているのは、あちらの国の慣習らしい。ぽかりと開いた穴の奥、 微かに窺える瞬きの気配が、こちらの全てを見透すような錯覚を与える。
食えねえ野郎だ。そう吐き捨てたいが、流石にこの男を相手に、 正面から刃向かう程馬鹿じゃない。苛々とした胸の内を押し殺し、 ギルベルトは落ち着いた顔で話を進める。
「話が違うんじゃねえか」
この契約は互いに同意をしたはずだ。きちんとサインを交わした契約書だってある。 細めたルビーの瞳で見据えると、困ったように彼は肩を竦めて見せた。
「けど、それは前当主と交わした契約だぜい」
確かにバイルシュミット家とは、 仕事の上において、歴代に渡る程の長い付き合いがあった。互いに、 それなりの信頼関係もある。
「でも、あんたは違う」
鷹揚とソファに身を沈めたまま、軽く片手を掲げる。尊大な印象を与える仕草だが、 しかしそれが鼻につかない。むしろ、相手に見えないプレッシャーを与え、 己が意思のままに事を進める効果さえ発揮する。この男には、 そんな王者としての風格が備わっているのだ。
「お前さんが、切れ者だってぇのは、知っているぜい」
あの堅物の当主が、 若いあんたを全面的に信頼していたのだ。右腕として働いていた頃の有能ぶりも、 彼の口から聞かされている。
「だがな、悪ぃが俺は用心深いタチなんでね」
こちとら、生まれた時から、食うか食われるかの世界に生きてきたのだ。生憎、 簡単に他人を信じる事が出来る程、生っちろい考えは持ち合わせていない。
それが、この男の生きてきた世界なのだろう。痛い所を突いてくる。 ギルベルトは足下をすくわれるような感覚を覚えた。
この業界、 名家の名前はそのまま信頼の証であり、保障となっていた。しかし、 私生児であるギルベルト自身はそれが無い。確かに自分はバイルシュミットを継いでいるが、 あくまでも後見人としての立場である。
自覚は持っていた。だからこそ、 実力で判らせてやろうと思い、努力をした。だが、それだけでは補えないものもある。 これは今後、自分が何度でも突き当たるであろう壁だ。判っている、 この家を背負うと決めた時から予想の範疇だ。
だからこそ、 今こんな所でバイルシュミットの名に傷をつける訳にはいかない。 その名を轟かせるサディク・アドナンの一族との契約を切られるという事実は、 経済的にも然り、バイルシュミットとしての今後の信用を落とす事へと直結する。
「あんたが言いてえ事は、判っているつもりだ」
つまり、俺は信頼できないんだろ。
攻撃的に細まるギルベルトの瞳に、ひゅっとサディクは息を吸った。そして、 やや大袈裟な動きで首を横に振る。おいおい、勘違いしねえでくれよ。
「俺ぁこれでも、 結構お前さんを買っているんだぜい」
その若さでバイルシュミット家の全てを引き継ぎ、 そしていずれはその全てを失う男。そんな噂を聞いた時、 随分面白い男じゃねえかと感心したものだ。しかも事業に関する手腕は確かで、 先代当主よりも先見の明が効いているときている。実に大したもんじゃねえか。
「ただお前さんは、どうも俺と似ている気がするんでい」
これは直感だ。
こうして対面し、更に確信を深めた。タイプこそ違うが、確かに自分と同じ匂いがする。
「だからこそ、警戒する必要があるってなもんじゃねえか?」
にいと歯を見せて笑う。
サディクは、この手の自分の直感を信じている。気の所為だと笑い飛ばさない。 それが何度も自分を救った過去がある。
この男は油断ならない。 隙を見せたら終わりだ―――なあ、そうだろう?お前さんも、俺を見てそう感じた筈だ。
見えない筈の仮面の奥の瞳が、酷く凶悪な光を宿した。





書庫室の扉の前の集合場所。ぱたぱたと走り寄った三人は、確認するように視線を交わし合う。 しかし、菊も、ルートヴィッヒも、フェリシアーノも、晴れない表情のまま首を横に振った。
確かに白い尻尾を見た。にゃあと鳴き声も聞こえた。鈴の音も耳にした。 だけど、三人がかりで探したものの、未だその実態を発見するに至っていない。
迷い猫なら、早く見つけなくてはいけない。何せローデリヒは猫は嫌いだと公言していたし、 ギルベルトだってどうだか判らない。見つかったらいじめられるか、 何処かへ捨てられるかもしれないのだ。
ならばその前に、三人で保護をしなくては。
使命感に三人は顔を見合わせて力強く頷くと、捜索隊は決意を胸に、 もう一度それぞれの持ち場へと向かった。ルートヴィッヒは階段と二階、 フェリシアーノはそれより上の階と屋根裏、そして菊の持ち場は一階である。
階段を上る二人の後姿を見送って、菊はくるりと踵を返した。
この屋敷の一階には、日当たりの良い応接間がある。今日は来客が来ているみたいだが、 先刻執務室の前を通った時に、扉越しに話し声が聞こえた。だから、 恐らくはそちらへ案内したのだろう。ならば、この応接間には誰もいない筈である。
基本的に来客の際は、こちらには近づかないようにしていた。しかし、今回は緊急事態なのだ。 心の中でそう何度か復唱し、応接間の前に立ち、耳を澄ませて中の気配が無い事を探り、 音を立てずに厳つい扉を開くと、僅かな隙間からこっそりと中を窺う。
ほら、 やっぱり誰もいない。空っぽの室内を確認して、そろりと菊は身を滑らせた。
中央には、 華美な装飾は無いが、しっかりした作りのオークのテーブルが置かれてある。その上には、 一人分のティーカップと、クッキーの乗せられた小皿があった。今は誰もいないが、 どうやら寸前まで誰かが居たらしい。
菊は小皿の上のクッキーに手を伸ばしかけ、 逡巡した後結局引っ込めると、そそくさと室内を探して回った。
ソファの影、 テーブルの下、飾棚の横…矢張り、ここにもいないのか。落胆すると、 ふわりと黒髪が風に煽られた。視線を向けると、バルコニーへ向かう大きな窓が、 ほんの少しだけ開いている。
ふわりと拡がるカーテンをかき分け、バルコニーへ出た。 その向こうのガーデンに、菊は瞬きをする。そう言えば、こちらはまだ探していない。
小さな階段を下りて、菊は庭に出た。
この国の庭は、きっちりと草木を刈り込まれ、 左右対称を基本に、まるでブロックのように整理され、一糸の乱れさえ許さない整然さがある。 自然の姿をそのまま縮図にしたような、菊の国ものとは随分趣が違っていた。
蔓薔薇のアーチを見回し、白亜の噴水の脇を窺い、木製のベンチの下を覗き込む。 広くはないがきちんと手入れをされた庭を、菊は小走りしながら探して回った。
ころん、と届いた小さな音に、はっと顔を上げる。
音源はこちら。 低木が生い茂ったこの辺り。菊は膝をつくと、四つん這いの姿勢で低木の下へと潜り込んだ。 もそもそとお尻を動かして奥へと入ろうとするが、なかなか思うように進まず、 菊はむうと眉根を寄せる。
ころころ、と音がした。今度は背後から。
その姿勢のまま振り返ろうとするが、茂みに視界を邪魔されて向こうが見えない。 方向転換できない狭さに、そのままお尻からずりずりと後ずさった。
そっとそおっと茂みから身を引いて、頭が抜けて、ようやく振り返った所で。
ふにゃあ。
くすぐったいような鳴き声と共に、もふっと顔に被さる柔らかいそれ。 ぎょっとすると同時に、肉球のついた手足が、わしわしと菊の頭にしがみ付いて来る。 どうやら温かいこれは、猫のお腹であるらしい。
あまりに至近距離過ぎるそれに手を伸ばすが、 それより早く、柔らかい塊がそっと離れる。
目の前に迫る、細い瞳孔。 くるりとした大きな金色の瞳一杯に映るのは、こちらの呆けた顔。ぱちぱちと瞬きすると、 にゃあと可愛らしく声を上げた。
それがひょいと離れた。両手で支えていた真っ白い子猫を、 慣れた動きで胸に抱え込むのは、癖のある栗色の髪を持つ彼。
誰だろう。 見上げる菊に、ピスタチオグリーンの瞳が、ほわりと弧を描いた。





平行線のまま、商談は一旦打ち切られた。
サディクの突きつけた契約の継続の条件は、 とても同意できるものじゃない。兎に角、直ぐに決定できるものではなく、 後日もう一度改めて…との言葉に、サディクは快く同意した。
「まあ、お前さんが納得できるまで、ゆっくり考えてくれや」
「そりゃどうも」
しかし今のギルベルトに、それを打破できるだけの持ち駒は無い。 この男はそれを判っている。
互いに顔を見合わせ、凶暴に唇を吊り上げた。
殺伐とした空気のまま執務室を出ると、二人は応接室へと向かった。 そこに、サディックの連れを待たせている。
しかし扉を開いた瞬間、 「あれえ」と彼は素っ頓狂な声を上げた。
「どうした?」
「あのくそ餓鬼ゃあ…」
大人しくここで待ってろって言いつけておいたのに。 相変わらず、人の言うことなんぞ、ちっとも聴きやしねえ。吐き捨てるように舌打ちをひとつ。 わしゃわしゃと自分の頭を掻き、苛立たしくため息をつく。
「いねえのか」
彼がこの屋敷に訪問した際、幼い子供と一緒であった事はギルベルトも知っている。 執務室にて商談をする間、この応接室で待っている様に伝えていたのだが。
「ったく、手間取らせやがって」
だあっと声を上げ、歯噛みする。 これが人の屋敷でなければ、壁でも蹴り飛ばしそうな勢いだ。
思った以上に時間が掛かったので、何処かへ行ってしまったのだろうか。 幼い子供だし、まさか屋敷の外までは行っていないと思うのだが。
応接間の扉を開いたまま立ち尽くす二人の後ろ、ひょこりと姿を見せたのは、 ルートヴィッヒだった。
「よお、ルッツ」
珍しいな、一人か。 普段はまるでセットのように、フェリシアーノと菊、三人一緒に居るのにな。 その前にしゃがみ込み、金の髪を撫でながら。
「なあ、 お前と同じくらいの子供が来ているんだけど、見てねえか」
ルートヴィッヒは少し首を傾げるが、ふるふると首を横に振った。 そうか、この屋敷内には居ると思うのだが、何処かで迷子にでもなってんのかもな。
「とりあえず、探すか」
お前も手伝ってくれ。立ち上がるギルベルトに、 ルートヴィッヒは少し逡巡した後、こくりと頷いた。











「おい、見つかったか」
階段から降りてきたルートヴィッヒは、 ふるふると首を横に振る。途中出会ったフェリシアーノも加わって、 さっきまでの秘密の猫捜索は、今は迷子捜しにすり替わっていた。
「どこ行っちまったのかなあ」
「くそ…あの馬鹿が」
サディクの露わな怒り具合に、 横に居たフェリシアーノがびくりと身を堅くする。泣き出しそうな様子に、 おいおいとギルベルトが宥めた。
「そんなに怒るなよ、あんたの子供だろ」
「は?冗談は止めてくれや」
小馬鹿にするような声は、実に忌々しそうだ。 びくびくと瞳を潤ませるフェリシアーノに気付くと、ああ、 済まねえな…改めるようにこほんと咳をした。
「訳ありでね。 仕方ねえから引き取ったんだが…これが可愛くねえ餓鬼でね」
愛想はねえし、 懐かねえし、生意気だし、何考えているか判らねえし。全く、 誰が世話してやってると思っていやがるんだ。
何となくシンクロする誰かさんに、 はたと思い出す。
「おい、そういや菊は?」
その指摘に、 二人の子供ははっと顔を見合わせた。
菊はここ、一階が探索の持ち場であった筈だ。 迷子探索になってから、ギルベルトとサディクも含めて、フロア関係なく探していたが、 そう言えば菊の姿を誰も目にしていない。
一体どこへ行ったのか。疑問に首を傾げながら、 一同が一旦最初に居たであろう応接室へと入った時、ギルベルトが目を細めた。
「…庭か?」
風の通り道に煽られて、カーテンがふわりと舞い上がる。 バルコニーから中庭へと続く窓が、微かに開いているようだ。そう言えば、 屋敷内ばかりを探していて、そちらの探索はまだだった。
大きな窓をかたりと開いてバルコニーに出ると、 目の前には午後の柔らかい陽光の注ぐ中庭がある。ぐるりとそちらを窺うと、 探すまでも無く、木陰に置かれた小さなベンチにちょこんと腰を下ろす菊がいた。
「きくー」
声を掛けて走り寄るフェリシアーノに、菊は人差し指を口の前に立てる。
見ると、菊の膝を枕にしてころりと体を丸める子供と、 その腕の中にころりと丸まる真っ白い子猫がいた。どうやら眠っているらしい。
その伏せられた瞳が、集まる人の気配に、ぱちりと開いた。
菊の膝の上の住民は、 寝ぼけ眼で半身を起こし、瞬きをしながら菊と、 それからこちらを覗き込むルートヴィッヒとフェリシアーノを見上げた。 覚醒し切っていないのか、腕に抱いていた子猫がずるりと転がる。
もしかするとこの子の事か?問いかけるように二人の子供が振り返り、 ギルベルトも隣に立つ男を振り仰いだ。
だがサディクは、仮面の奥の瞳を見開き、 驚愕のままに固まっていた。
「あんた…」
さらりと流れる髪、 黒真珠を思わせる瞳。何度も夢に繰り返していた、決して忘れられない色がそこにある。
「どうした?」
掛けられた声に我に帰った。動揺を隠さず、参ったな、男っぽく苦笑する。 強い皮肉を浮かべていた唇が、今は酷く穏やかな柔らかさを乗せていた。
「驚いたぜい…まさかこんな所で逢えるなんてな」
ゆるりとバルコニーから庭へ下りると、 ベンチの前に立ち、無表情のままに見上げてくる東洋の子供を見下ろす。ああ、 矢張りそうだ。確信すると、サディクは菊の前に、傅くように片膝をついた。 その空気に押されて、自然、ルートヴィッヒとフェリシアーノは数歩離れる。
間違いない。他に類似がない独特の民族衣装、大陸のものとは違ったまろやかな顔立ち、 そして凛とした佇まい。この俺が間違える訳がない。
「ジパングの人間だな、あんた」
仮面の奥の瞳を優しく細めて口にする名前に、菊は答えない。だが、答えなど無くとも解る。
「あんた、知っているのか?菊の国を」
「ああ、当然でい」
忘れやしねえよ。 絶対に。
「俺は、あの国に助けられたんでい」
そう、今でも全てを思い出せる。 その昔、遠い海を航海する最中、嵐の忠告を聞かずに強行し、船が難破した事があった。 そんな無謀者の船を、己の命も省みず助けてくれたのが、この国の住民だったのだ。
貧しい村であったにも関わらず、手厚い待遇を受けた。親身で献身的な優しさに触れた。 その際中心になって村人に指示を出し、率先して救出作業をしていたその村の宮司は、 今の菊と同じ型の衣服を身につけていた。
「あのときの御恩は、死んでも忘れねえよ」
そっと仮面に触れると、目元を隠していたそれを外す。
膝を突いたまま控えめな仕草で手を伸ばすと、菊のゆるりと流れる狩衣の袖を、 恭しく両手に取った。
「お前さん、菊…って言ったか」
こくりと頷く菊に、 口元を綻ばせる。ああ、お前さんらしい、誇り高くて高貴な名前だ。
「あんたに会えて…よかった」
滲むような穏やかな声。 この男はこんな声も出せるのか。
驚くギルベルトの目の前で、 サディクは両手に掲げた菊の袂に、そっとキスを贈る。 騎士が心酔する姫君に忠誠を誓う証のようなそれは、まるで神聖な絵画のようだった。

―――しかし、そんな二人に押し入ったのが。

「…ってえーっ」
遠慮のない力でその背中を蹴飛ばしたのは、サディクの連れの幼子、ヘラクレスであった。 不機嫌な目を隠そうともせず、心底嫌なものでも見るかのような目で睨みつける。
「ったく、何なんだ、おめえはよおーっ」
「…さでぃく…しね」
向かい合う二人の間に割り込むと、そのまま菊の手を取って立ち上がらせた。
「いこう、そばにいるの…よくない」
「いい加減にしろよ、くそ餓鬼がっ」
俺は貴様を捜していたんだぞ、コラ。
くるりと癖のある鳶色の髪の上、 力加減のない拳骨が落ちた。

















「今回ばかりは、菊に感謝しなくちゃいけませんね」
仕事のファイルをめくりながら事の顛末を聞いたローデリヒは、 笑みを刷いたままそちらを見る。執務室に頬杖をつきながら、 ギルベルトはあーと何処か力の抜けた声を上げた。
散々時間を掛けて話し合い、 それでも纏まらなかった契約の件は、あの後あっさりと元の鞘へと収まった。
サディク曰く、世話になった国の住人である菊と、 そんな菊に縁のあるバイルシュミットを困らせるのは不本意…と言う事らしい。 あの男は見掛けによらず、随分と義理堅いようだ。
「代わりに、 また菊に会いに来たいとさ」
「それはそれは」
ローデリヒも、サディクは知っている。 あの厳つい男が表したと言う菊への敬意の態度は、是非拝見してみたいものだ。
「まあ、彼は意外と面倒見が良いとの話も聞きますよ」
確か彼の連れてきた子供は、 過去に深い縁のあった女性の落とし胤との噂を聞いた事がある。そんな子供を引き取り、 育てる位なのだから。
「案外、貴方に似た所もあるのかもしれませんね」
「おいおい、勘弁してくれよ」
そっぽを向いて複雑な顔をするギルベルトに、 おやと目を丸くする。どうやら、自覚は無いらしい。
不満げに尖らせた唇に、 ローデリヒはくすりと笑った。








実は一番最初は、地中海三つ巴からハマりました
2010.08.23







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