黒鷲は東の未来より舞い降りる
<19>





ドイツ騎士団の総本部にある書庫室。突然やって来たその姿に、初老の司書は驚いた。
「久しぶりじゃないか、キク」
書庫内でも最古参の司書たる彼と菊は、互いに良く見知った間柄だ。 それこそ、菊が文字を覚え始める頃から、その成長を見守り続けていた一人でもある。
手にしたペンを置き、再会に笑顔を浮かべて迎えるが、しかし彼女の様子がおかしい。 余程急いで来たのだろう、羽織ったマントは土埃で汚れ、 息は上がり、艶やかな黒髪が一筋、しっとりと頬に張り付いている。
どうかしたのかい?声をかける前に、縋るように腕を取られた。 常に礼節を弁え、他者との接触を極力避ける傾向にある彼女にしては、実に珍しい事だ。
整わない息のまま、急き立てるように身を乗り出し。
「ドイツ騎士団は何処へ行かれましたかっ」
教えて下さい、お願いします。
本部の書庫には、ドイツ騎士団の活動を書記したもの、 中には表沙汰出来ない様な重要機密さえ、資料として全て記録し、保管されている。 その任故に書庫の管理者や司書には、騎士団の動向や今後の活動内容が、全て通達されるようになっていた。
ああ、頷きながら、蓄えたあごひげをひと撫でし。
「十日程前から、本隊は遠征へ行ったよ」
それが、どうかしたのかい?
「本隊?」
今まで聞いた事の無い名称に、菊は眉を寄せた。
「あれ、キクさん」
奥の書記室の扉から姿を現したのは、プルツェンラント出身の少年騎士だ。 ポーランドでの裁判の記録係を務めた彼は、それを資料として纏める為に、 今は文字や語学を学びながら書記作業を務めている。
「ポーランドから帰って来られたんですか?」
ヤドヴィガの裁判以降、菊はそのまま単独でポーランドに滞在を継続していた筈だ。 王妃の計らいで、特別にポーランド国内の書庫の閲覧と、一部の大学の聴講の許可を得たのである。
少年騎士にも、現行の書記に目処が付けばそれに便乗する話があった。 それなのに、彼女が帰還してくるとは。もしや、何か緊急の事態でも発生したのだろうか。
事実、今目の前にする彼女には、上ずった苛立ちさえ感じる。 普段の物腰がおっとりと落ち着いているだけに、顔を強張らせて眉根を寄せる様は、息苦しい悲壮感さえあった。 一体何があったと言うのか。
「顔色、悪いですよ」
心配そうに覗き込む視線に、菊は唇を噛締めて俯いた。
そして、そっと胸元に手を当てる。


指先に感じるのは、服の内側に隠された黒十字のペンダント。
クロスの裏面に刻まれた四桁の数字は、今までも幾度かの変化を見せていた。 変化の理由は判らない。 謎に首を傾げながら、もしかしたらと見出した可能性に、淡い期待と一縷の望みを託し、 自分の夢見た知らない未来を願った。
でも、それが―――消えた事など、一度も無かったのに。
気が付いたのは十日程前。やや掠れたように感じてから、完全に消滅するまでは早かった。
そして、数字だけでは無い。 共に刻まれていた「菊へ捧げる」というドイツ語のメッセージも、 今は読み取るどころか、あったことさえ疑わしい程に、何の痕跡さえ残っていないのだ。
これは一体、どういう事なのか。


逸る気持ちを、深呼吸で抑える。
「十日程前……ドイツ騎士団は、隊と共に遠征されましたか」
「ああ」
遠征への出発は、黒十字の文字が消え始めたと同じ時期である。 関連性の可能性は、大いに有り得る。
「そんなに危険な遠征なのでしょうか」
いやあ、老司書は首を捻る。
「恐らく今回は、後方支援になるかとは思っているんだが」
詳細は現地到着後の決定になるだろうが、はっきりとした作戦内容までは伝えられていないので、 そうなりそうだとの予想である。 リヴォニア騎士団合併後初の遠征でもあり、今回は比較的大人数での参加だ。 念の為にと総長が依頼主の元へ確認に向かっているが、場合によってはそのまま本隊に合流するかもしれん。
菊はぱちりと瞬く。依頼主?後方支援?単独では無く?
「東方遠征ではないのですか?」
「いや、今回は援軍の依頼だよ」
修道会騎士団は、異教徒の改宗をその目的としている。 ドイツ騎士団も基本的に、東方の異民族への改宗の為の遠征に重点を置いていた。
しかし、団体の活動や維持には、それなりの資金が必要だ。 騎士団はそれぞれ、有力者の寄付、自治権を持つ街や農奴の諸権利、所有領地の経営収入、 銀行の運営等、独自の財源の確保をしている。 ポーランドやハンガリーから受けたような傭兵依頼は、そんな運営費用を稼ぐ手段の一つだ。
「どちらへの援軍ですか?」
「我らと同じ、修道会騎士団だ。地中海へ向かったよ」
この時代の地中海と聞いて、まず頭に浮かぶのはオスマンだ。 絶大な勢力を誇るオスマントルコを前に、この時期十字軍は、既に聖地奪還を断念している筈である。 しかし、世俗騎士団ではなく修道会騎士団を派遣させるとなると、目的は一つしか無かろう。
「ローマ教皇は、十字軍遠征を復活させるおつもりなのですか?」
そんな無謀な。持て余すように首を振ると。
「否、これはローマ教皇の依頼では無いよ」
瞠る菊に、少し考え、まあ良かろうと司書は頷く。 依頼主に関しては機密に相応するが、菊に対しての信用は厚い。 彼女が騎士団に不利益を与えることは、まずあり得ない。
「依頼主はフランス王、フィリップ四世だ」
フィリップ四世。その端整な容姿から美男王と称される、絶対王制を唱えた強国フランスの王。
「フランス王が……ドイツ騎士団に依頼?」
日本が知る歴史の中では、彼は教皇至上主義であるローマ教皇と対立関係にあった筈だ。 ならばこれは、宗教的な遠征とは違うものなのか? それ以前に、強国フランスの国王なら、 わざわざ辺境の修道会騎士団に依頼せずとも、相応の傭兵団を抱えているのではないか?
どうにも腑に落ちない……否、考えるんだ。現在進行中のこの歴史は、日本の記憶とは違う。 先入観は持つな。今ある事実を整理し、見極めろ。 フランス王、修道会騎士団、地中海。この三つに、何のキーワードが隠されている? こめかみに手を当て、思いつく様々を脳裏に巡らせる。
そして―――ぎくりとした。
ひやりとした、嫌な予感。ざわざわと背筋を伝うそれに身震いした。 まさか、とは思う。しかし、胸騒ぎがして堪らない。固定概念は捨てろ、可能性を打ち消すな。 ここにある現実は、日本が知る歴史とは違うのだ。
フランス王から見て、修道院騎士団はどのように見えるのか。 信仰の象徴?経験豊富な兵力?否、違う、そうでは無かった。
慄く唇のまま、菊は言葉を紡ぐ。
「すいません、記録を見せて頂けますか」
「記録?何の記録かね」
「ドイツ騎士団領内と、自治権を持つハンザ同盟都市とギルドの財政の記録を」





武器製造の担当を外れて以降、菊は騎士団の内情や運営に接触することは殆どなかった。 当然だろう、一介の派遣兵士が触れるべきものではない。 第一、知ろうにも騎士団合併以降、菊は本部へ足を運ぶ事さえ遠慮し、控えていたのだ。
だからこそ、目の当たりにしたそれらに目を疑った。
菊が開発に携わっていた大型武器は、ハンガリー戦以降大幅に改良が加えられ、 新型兵器としての実用化に漕ぎ着けていた。この事に関しては、菊自身予想済みである。 しかしそれが、大量生産を可能にし、 ドイツ騎士団の財政面を補う一角を占める程の利益を上げているとは予想外であった。
この兵器を使用したハンガリー・プルツェンラント戦は、元より周辺諸国に注目されていた。 そこで成した圧倒的な戦果は、それまで辺境の集団であったドイツ騎士団の知名度を上げ、 それと共に戦場で活躍した兵器の実力も、宣伝として大いに貢献していたのであろう。
いつかはそうなるとは思っていた。しかし早過ぎる。 だが、改めて一つずつを考えてみると、確かに要素はきちんと揃っていた。
騎士団が開講した公開講義は、周辺地域にも噂が広まり、 各地から身分に関係なく、優秀な才能を持った技術者を集める事に成功していた。 基礎教育を受けた技術職人によって研究と開発が促進され、大量生産を可能にしたのは、 極当然の流れかもしれない。
そしてそれを呼び水に、街には人が集まり、活性化、発展し、ギルドは成長し、順調にその収益を増大させる。 大きな運河の所有、自由貿易等、元より領土内の土壌は整っていたのだ。 それにバブルのような景気の良さが加わり、ドイツ騎士団の所有地を潤す。
そして、都市部だけでは無い。 地方領地の農奴からの収入の増加と安定は、恐らくは修道院にて提案した、輪栽式農法へ切り替えの成果であろう。 遠征で得た領土は、肥沃とは言い難い土地にも関わらず、他の欧州から一歩先んじた農業革命を起こしていた。
更に、もう一つ。
「……周辺国の人口が、激減している年があるようですね」
記録から、あちらこちらの周辺国に、人口の異常が見られる時期が窺える。
「それは、黒死病の影響ですよ」
現在の欧州に、黒死病の決定的な治療法が無い。 しかし、ドイツ騎士団領内では、ハンガリーのペスト対策から教訓を得、予防法と衛生概念が広まっていた。 一部で発生する事こそあれ、流行の報告は殆ど聞かない。 疫病の影響を受けない他地域との格差が、相乗効果として更に全体の収益の底上げへと繋がっている。
大きくはない要素が少しずつ重なり合い、 気付かぬ内に、ドイツ騎士団は予想以上の財力を蓄えていたのだ。
知らなかった。当然だろう、只の派遣兵である菊には、あずかり知らぬ情報である。 しかも、ドイツ騎士団の容姿に変化が乏しかっただけに、全く失念していた。 象徴の見た目が、年齢や国の規模に左右されないことは知っていた筈なのに。
悪いことではない。寧ろ菊自身、ドイツ騎士団領の発展は望んでいた事だ。喜ぶべきことであろう。
だが、この事実が、菊の疑惑に一つの確信を持たせることになった。
直接確かめなくては。そして、何とかして止めなくては。 卓上で可能性の不安に怯えている場合では無い。 もしもこの最悪の予感が当たれば、恐らくドイツ騎士団は消滅する。
「ドイツ騎士団を追います」
えっと顔を上げる老司書と少年騎士の前、腰を下ろしていた椅子から立ち上がる。
「隊長は、どちらにおられますか?」
時間の余裕は有りません。直ぐに出立を報告します。
「今日は、会議に出席していらっしゃいます」
本隊を除く、現在本部に残る各部隊の代表との会議だ。 果たしてそれが、どれぐらい時間が掛かるものなのか。
「時間がありません」
上司たる隊長には直接伝えておきたかったが、今は一刻を争う。 その立場上、菊には騎士団員に与えられるような、細やかな制約や規則は殆ど無い。 個人の行動である、伝言さえ残しておけば、問題は無かろう。
踵を返し、書庫の出口へと足を踏みしめた所で。
「キク、いるのか」
入室してきたのは、正にその隊長であった。 どうやら本部にやって来た菊の姿を見た誰かから、その帰還を聞いたらしい。 丁度良かった。走り寄る菊に、隊長はいつもの懐の深い笑顔を向けた。
すいません、急いでいたもので、御挨拶が遅れました。 いや、そんな事は良い、それよりも。難しい顔で眉根を寄せる。
「……副総長が、お前を呼んでいる」





新たに昇任した副総長との対面は、これが初めてであった。
正式な騎士団なら兎も角、戦力が必要なときにのみ召集される一介の臨時兵に、 騎士団の上層部がわざわざ顔を合わせる事等無いに等しい。それが普通だ。
その上菊は、騎士団合併が決定した同時期にはポーランドに滞在していた。 合併後、本部に足を運んだのは、この日が初めての事になる。
十数名に及ぶ騎士団員が揃う会議室。 古参メンバーで構成された本隊が不在なだけに、ここにいるのはほぼ元リヴォニア帯剣騎士団ばかりであった。 物珍しげに投げられる視線を肌に感じながら、菊は副隊長の言葉を反芻した。
「東方遠征への、同行ですか?」
「そうだ」
彼は元、リヴォニア帯剣騎士団の総長であった。 大きな身体の威圧感と斜に構えたような眼つきは、貴族然としていたドイツ騎士団総長とは異なり、 何処か荒くれた印象を与える。
菊の所属は、ある意味特殊な部隊であった。 通常の修道会騎士団が主とする宗教活動では無く、急遽全く別の場に兵力が必要とされた時に駆り出される、 謂わば臨時部隊である。 本来の活動とは違う……例えばハンガリーやポーランドからの傭兵依頼などが、それに当たるだろう。
それが何故、今になって異教徒改宗活動に呼び出されるのか。
呆然とする菊を、副総長はじっとりと眺める。観察では無く、品定めをする目だ。 それを受けながら、改めて菊は副総長を見上げる。
「恐れ入りますが。同行には、少々お時間を頂けませんか」
東方遠征の任に就く事は構わない。 恐らくその血みどろな戦場の有り様から、敢えてドイツ騎士団は菊を遠ざけていたのであろう。 菊自身、宗教的な概念が乏しい自覚がある故に、正直その配慮には内心安堵していた事も否めない。 しかし、いつかはその参加が必要になるとの覚悟はしていた。
だが今は、それよりも。
「個人的ではありますが、どうしてもやらねばならない事がございます」
それを済ませるまでは、申し訳ございません、同行をお待ち頂きたいのですが。
「否は認めない」
総長が不在である以上、本部に置ける私の言葉は総長の言葉と同じ事。お前はそれに逆らうと言うのか。 拒否をすれば、それは敵前逃亡と見なす。
跳ね付けるようなそれに、ぐっと息を飲む。呼吸を一つ、気を落ち着かせて。
「参加は致します、しかしお願いします、今は……」
「ドイツ騎士団や総長は、随分お前を特別扱いしていたらしいな」
しかし、それがいつまでも通用するとは思わない方がいい。 黒鷲の守護神だとか称され、調子に乗っているようだが、所詮は女。 異民族の小娘が、ここに所属するだけでもありがたく思え。
あからさまに侮辱したその言葉に、数人の兵士から険呑な空気が生まれる。 皆、初期の頃からの、古参のドイツ騎士団員だ。
「キクへの侮辱は許さない」
きっぱりとした声を上げたのは、菊の傍に控えていた彼女の部隊長だ。
その後ろ、共に来たハンガリー出身の少年騎士も、きりりと眼差しを吊り上げて頷く。 同意を示すように、席についていた数人の騎士が、がたりと音を立てて起立した。 彼らは菊を良く知っている。生まれも、入団の経緯も、性格も、献身も、成し遂げた功績も。 彼女がどうであれ、騎士団の一員として、苦楽を共にした大切な仲間である。 新参者に、何が判ると言うのか。
会議室に緊張が張り詰める。
ざわりと広がる不穏な空気。まずい。 現在ドイツ騎士団は、他騎士団を吸収したため、古参と新参の間で、微妙な軋轢が生じている。
リヴォニア帯剣騎士団との合併に時間が掛かった理由は、彼らの評判の悪さを懸念していた為だ。 そしてリヴォニア帯剣騎士団とて、ドイツ騎士団の傘下に入る事に、不満を感じていたらしい。 仲介するローマ教皇の顔を立てる形で現状に収まったが、 実態はドイツ騎士団を中心に編成した本隊と、それ以外の隊に分裂した状態である。
何も知らない新参者が。女ごときに何ができる。彼女は我々の仲間だ。 異民族が騎士団に居ることが間違いではないか。騒然となる空気に、菊は周囲を見回す。 駄目だ。総長が不在の今、内部対立の溝を深めれば、今後の指揮にも影響が及ぶ。 だが、詳細を説明し、弁明する時間はない。迷っている暇もない。
ならば、一つしかないではないか。
「承知しました」
銀製のブローチをぱちりと外す。 止めていたその白いマントを翻し、ばさりと黒十字の入ったそれを脱ぎ捨てるのに、躊躇はなかった。
「菊は只今より、ドイツ騎士団を脱退します」
「キクっ」
派遣の兵士としての立場上、脱団に問題はない筈だ。 正規の騎士団のような入団の誓約も、誓いの儀式も交わしていない。 一刻を争う。ここで必要のない争いをしている時ではない。
「我を張れば通ると思うのは、間違いだぞ」
それともその場の思いつきでの、我らに対する当てつけか。 総長はどうか知らぬが、私はそこまで甘くない。短絡的で感情的な思考は、まごう事無く女のもの。 出陣前の敵前逃亡とは、噂に聞き及んだ名高きドイツ騎士団の黒鷲も、死ぬのは怖いと見える。 ふふんと副総長は鼻でせせら笑う。
「一度口にした以上、撤回はできないぞ」
「承知しております」
副総長に一礼し、そして呆然とする部隊長へと向き直る。
「いろいろとお世話になりました」
幼い頃から今に至るまで、身寄りのない私への心遣い、感謝の言葉もございません。 貴方が私の隊長であったことが、私にとっての救いでもありました。 今までのご恩は、決して忘れません。
「待ちなさい、キクっ」
突然、何を言い出すんだ。慌てる部隊長に、菊はにこりと笑って首を振る。 突然では無い。本部に足が遠退き始めた頃から、いつかこうなるかもしれないとは予感していた。
「本当に申し訳ありません。これで失礼します」
一人一人にきちんと御挨拶すべき所なのですが、こんな形で騎士団を去ることをお許し下さい。 呆気に取られた古参の騎士団員達へと視線を送り、胸に手を当てて丁寧に礼をする。
踵を返すと、未練を残さない身のこなしで、菊は会議室から立ち去った。


ぽかんとする中、ぐい、と腕を掴まれて、少年騎士ははっとする。 顔を上げると、切羽詰まった部隊長がいた。
「キクを追えっ」
密やかな声。遠征に参加しないお前なら同行できる。彼女と一緒に行け。 きっと彼女の力になるだろう。俺たちは動けない。だから、頼む。
「あいつを、助けてやってくれ」
少年は目を見開き、そして唇を引き締めると、こくりと頷いた。























例えば。
それを、カードゲームに例えるとする。
各々が持ち合せるのは、「外交」という名のカードだ。 それを順番に引き合い、同じ「利益」が重なると、捨てカードとして消えてゆく。 カードの図柄は、国土であったり、金であったり、兵器であったり、時には思想であったり、 中には解る者だけが読み解ける暗号のような謎の絵柄であったりもする。
己が理を得たい為に、ゲームに参加する者がいる。誘われて、仕方無く参加する者もいる。 条約や同盟から、強制的に参加せざるを得ない者もいる。
参加する者は、己の利益を重ね合わせ、さっさとゲームから上がろうとする。 時には、切り札を使いながら。 時には、こっそりと互いのカードを見せ合いながら。時には、ブラフを駆使しながら。
ゲームは予想した以上に長くなる。誰もがうんざりし始めて、早く終わらせたいとは思うのだが、 ゲームを終了させるには、最後に誰かがジョーカーを手にしなければならない。
誰かが負けなくては、ゲームはいつまでも終わらないのだ。





最初の点火は、ヨーロッパの一点。
その炎は、網の目のように張り巡らされた外交の導火線を伝い、 思いもよらぬ所にまで広がり、またたく間に大火へと巻き込んでゆく。





歴史上一番最初のナンバーを掲げた、世界を巻き込む大戦が始まった。








ゲームへの例えは、我ながら不謹慎だと反省
2012.04.28







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