9月のお題「月光」より、小噺。
ジャンル違い、要注意。
以下、楊太小噺です。
月の丸い夜だった。
「いい加減、収穫せねばのう」
秘密の森で、月の光を浴びて実を結ぶ、満月のように丸い特別な桃。
もう少し、あともう少しと思う内に、実はもうすっかり完熟してしまった。
丹精込めて育てたその果実を採ると、最後の収穫にさやさやと木の葉が鳴る。
大振りの桃は、薄皮を剥くとほんのりと光っていた。
金色と銀色の、ちょうど中間の色だった。
「お主が苦しみから解き放たれるように、わしが作ったのだ」
両の手で包み込み、捧げるように差し出されるそれに、恭しく歯を立てる。
特別な桃は、喉を通ると、しゅわりと炭酸のように弾けた。
ああそうか、これが月の光の味なんだ。
冷えた甘さの中には、少しだけ、三日月のように突き刺さる苦味が含まれていた。
あれは幻だったのだろうか。
実際、あの時のかの人の姿は、僕の知る誰とも輪郭は一致しない。
真昼に浮かぶ月のように朧な記憶は、単なる夢だったのかもしれない。
でもこんな月の夜には、不意に僕の心の袖を引く。
そして、痛みに似た何かと共に、残像が胸の奥を掠めて消えるのだ。
ファンタジー調にするつもりだったのに、このありさま。
どうも最近、書きたいものが書けずストレス気味。
書きかけも沢山あるし、じっくり腰を据えてお話を書きたいなあ。