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読みはニセサク

観劇して参りました! NODA・MAPの「贋作・桜の森の満開の下」!!

変動しがちな「この目で観たい舞台トップ5」内一位を不動に保ち続けた、
憧れであり、舞台に嵌った切っ掛けの作品であり、自分の中での原点。
こちらの作品が好き過ぎて、坂口安吾の原作を読み、戯曲本を買い、
ビデオテープ(の時代でした)を擦り切れるまで繰り返して観て、
作中使用曲をipadに入れ、未だに作中の台詞を殆ど暗唱できます。
本作を生観劇したくて、舞台好きになったと言っても過言ではありません。

すいません。この舞台に関しては延々と熱く語りがちになってしまうので、
あまりにキモ過ぎて他所では口に出来ないので、ここで語らせて頂きます。
以下、激しくネタバレするので、これから観劇する予定の方は要注意。



今回は名作の再演でもあり、豪華すぎるキャストの面々も手伝ってか、
取り難い野田舞台のチケットの中でもトップクラスで取り難かったです。

ポイントカードの特別先行予約(自分と姉の)→アウト
ネットの第一次先行予約→アウト
(父親の)クレジットカードのプレチケット→アウト
ネットの第二次先行予約(職場の人と三人体制)→アウト
ネットの最終プレ予約(職場の人と四人態勢)→職場の人が1枚ゲット!!
一般販売開始→玉砕

そんなチケット運の悪さをここぞとばかりに如何なく発揮しつつ、
運が無いなら努力でカバーすれば良いじゃない! と当日券に並び、
ゲットしたチケット含め、なんとか計四公演を目にする事が出来ました。
もうね、一回目は三時間並んで当日券をゲット出来たのですが、
窓口でチケットを手にした時は、涙目になっておりましたよ。歓喜で。

ファイル 2575-1.jpg


さて、ここでまずは簡単に「贋作・桜の森の満開の下」のご説明を。
この舞台は、現在日本を代表する演出家野田秀樹氏の作品であり、
同氏が主宰した伝説の劇団、夢の遊眠社にて1989年に初演された作品。
「贋作」と頭につく通り、元は坂口安吾の同名小説と、
「夜長姫と耳男」という短編がミックスされた内容になっております。
故中村勘三郎さんも惚れ込んだ作品で、歌舞伎舞台にもなりました。
実は再演自体は二度ほどありましたが、一度目の再演の後この作品を知り、
二度目の再演は東京のみの上演だったので、観ることは叶いませんでした。
キャストも新たに満を期した今回、なんと17年ぶりの再演となります。
因みに自分が観たビデオは、一回目の再演のものでした。

野田作品の特徴は、言葉遊びと、めくるめくスピード感が挙げられます。
早い台詞回しに流されがちな言葉が、実はちゃんとそれぞれ意味があり、
無駄に思いがちなあれこれも、緻密に計算されたものだったりします。
なので、一度観た時よりも、二度目、三度目になって初めて意図に気付き、
「そうだったのか!」と新たな発見に鳥肌&驚愕することもしばしば。
この手腕は本当にお見事で、舞台戯曲云々をすっ飛ばして、
自分の中での創作のお手本というか、目指すもののひとつになっています。
本作品でもそんな氏の作品の特徴が、如何なく発揮されております。
舞台上での世界の作り方といい、ビジュアルも踏まえた演出といい、
この人ホントに天才なんだ……と改めて思い知らされました。

因みに氏の言葉遊びには、自分も影響を受けた自覚があります。
昔この舞台を見た直後、余りにも衝撃を受け、いてもたってもいられず、
それを消化する為に書き上げたオリジナル小説もありましたっけ。
(輝夜姫異譚・サイト掲載&削除済み・前はオリジナルも掲載)

ファイル 2575-2.jpg


「”耳”に”心”がついた所で、恥と言われるだけじゃないか」
「カニクニを見て、ヒニネニ持つ夢。オニマニ受けて、ムニシニました」
「お礼に奴隷とは綺麗とは言え無礼だ」
<「贋作・桜の森の満開の下」の台詞より引用



さて、本公演の感想を。上記のものは、序章に過ぎません。
一回目の再演との比較がありますので、不愉快な方は要注意。

マナコは、キャストを聞いた時点で自分の中ですとんと嵌りました。
舞台を観ても、その予想に違わぬそのまんま。外れのないキャスティング。
気の小ささや臆病感は、羽場マナコよりも滲み出ていたと思います。
ただ、過剰なまでの動きが特徴の遊眠社の舞台の印象があっただけに、
極端に動きが少なくも感じました。こんな動かない役者だったっけ?

注目の天海さんのオオアマは、違うことなく「ザ・王子様」でしたね。
若松オオアマは天井桟敷仕込みの過剰なまでの身体能力と相まって、
重箱の隅っこが変態な王子様(勿論誉め言葉)でしたが、
こちらは常にキラキラエフェクトがかかっているように見える謎仕様。
あんな人が近くにいたら、王子様過ぎてとても正視できません。
立ち姿が舞台に映え、声を小さくしても不思議と台詞が聞き取りやすく、
もうあれやね、この人。日本の演劇界の至宝ですわ。リアル姫川亜弓さん。

耳男は、なんだか元気で威勢がいい感じ? 決して悪くはありません。
ラストの泣き方は、ちゃんと野田耳男を引き継いでいて安心しました。
個人的に「泣き方」の演技に関しては、「~トトロ」のさつきちゃん然り、
綺麗に涙を流すより、みっともない泣き方の方が胸に来ます。
野田耳男には無かった花びらを掛ける演出も、すごく良かったです。
でも時々、台詞回しに「?」と思う節も見受けられました。
これは、演者の脚本の解釈の違いなのかもしれません。

そして夜長姫は、ヒデキ調の絶叫系かな? 
夜長姫は桜色と呼ばれる二通りの声を出して演じる必要があるのですが、
無邪気な笑い声は可愛らしく、低い声には迫力がありました。
得体の知れない怖さは伝わり、これは何だろう……と考えた結果、
どうも白石加代子さんと被るものがあるように思いました。
深津夜長姫も作品全体から見ると全く問題はないし、充分力が溢れ、
彼女としての夜長姫を全力で演じていたのが伝わり、好感がありました。
ただ、ずっと自分の中にあった「理想の女の子」としての夜長姫とは、
正直、自分でもびっくりするぐらい違っておりました。
毬谷夜長姫の品のある透明感と、何処までも悪意のない無邪気さと、
無垢で奔放な純真さは、彼女でしか成し得ないものなのだろうな。
これはあくまでも好みの問題。
それを深津夜長姫に求めるのは、多分間違っているのでしょう。

台本も一部変わりましたね。勿体ないと思う箇所もありましたが、
監獄とゆえんちに関しては成程、改変後の方が良かったです。
あとエンマ様の人助けエコーは、なんかすごいツボに嵌りました。
それと音楽が、今回は全て完全オリジナルに変更。著作権の関係かな。
個人的にはクライマックスの「Suo Gan」と「私のお父さん」が好きで、
特に自分の中では「桜の森=Suo Gan」だったので、これはちと残念。

因みに本公演で、最も進化したと感じられたのが、アンサンブルの演出。
これが本当に素晴らしい。遊眠社の頃より、更に洗練されております。
特にテープと紙を使った演出が非常に面白い。「THE BEE」の流れかな?
すっきりしてて、好み過ぎて、自分のツボをグイグイ刺激してくれます。
この手の演出は野田さんならでは。やっぱりこの人、正真正銘の天才だわ。

……と、長々語りましたが、舞台は本当に、本っ当に良かったです。

多分現時点で考えられる、最高に近い形でのキャストではないでしょうか。
憧れの舞台をこの目で観ることが出来て、空間を共有することが出来て、
同世代を生きることが出来た自分の幸運に、心の底から感謝します。
最近少々劇場離れしておりましたが、改めて舞台の良さを実感。

キャストの皆さん、関係者の皆さん、野田秀樹さん、舞台の神さま、
素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。

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