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誰が彼を殺した

リアルで周りに舞台好きが少ないので、ここで叫びます。

結構昔ですが、すごく気に入っていたにも拘らず、
気が付けば見失ってしまった動画があったのですが、
再発見できた喜びに打ち震えております……っ。

内容は、海外上演であろう、ロックミュージカルの金字塔、
「ジーザス・クライスト・スーパースター」の舞台の内、
ラストのナンバーです。例のテーマソングのね。

何が良いって、このユダが、兎に角ものすごくカッコいい。
真っ赤なスーツ&翼にボルサリーノ帽というセンスがカッコイイ。
ダンスの小粋なステップがいちいちカッコいい。
ボルサリーノ帽を使った振り付けがカッコいい。
このナンバー特有のシャウトがカッコいい。
投げキッスの演出が素敵過ぎてカッコいい。
もうマジでリピートが止まらん。永遠に見ていられる。好き。

因みに、この直前のユダの最期のシーンはかなり衝撃的。
初見でかなりビビりました。こんなのもアリなのかと驚き。
この演目は、演出によって印象がかなり変わるのが興味深い。
熱海然り、こういう脚本は本当に面白いです。

ユダは全編を通じてシャウトが肝だと思っておりまして、
歌唱力は勿論ですが、このシャウトが自分の好みかどうかが、
それ以外の良し悪しより、左右されるポイントになります。
あとは、ヘロデ王のナンバー。ある意味、この曲こそが、
作品全体の「色」を決める、演出家の腕の見せ所になりそう。
尚、ヘロデ王に関しては、個人的には映画版が不動の至高。
登場のインパクトといい、はみ出る横っ腹の肉といい、
何処までも相手を小馬鹿にしたキッチュなダンスといい、
あれを超えるヘロデ王はそう出てこないんじゃないかな。

全曲英語での舞台、見に行きたいなあ。
四季はちょっと自分の好みではなかったんだよなあ。

スーパーな兄弟

ホント何年ぶりだろう、久しぶりに映画を見てきました。
昨今人気の「スーパーマリオブラザーズ ムービー」です。
正直、全く興味が無かったのですが、海外での大ヒットと、
評論家と観客の評価の落差のニュースに、興味を持ったのです。

マリオはオデッセイと、ヨッシー(?)をプレイした程度かな。
この手の技術が必要なアクションゲーは、かなり苦手な不器用者です。
オデッセイは甥っ子君と二人プレイで、なんとかクリアできたっけ。

さて、映画ですが、うん、こういうので良いんだよ!

本来のゲーム自体が至極シンプルなだけに、下手に凝ったり、
観客の意表を突く謎のサプライズとかは必要ありません。
ユアストーリー。お前のことだぞ。
ストーリーに厚みがないとかという批評は、多分ナンセンス。
誰が見ても判りやすい悪者と戦って、件のアクションがあって、
ゲームみを盛り込んで、ファンなら知っている小ネタがあって、
人のプレイを横から覗き込むような楽しさがあって、それで正解。
任天堂さんは、ちゃんとその辺りを解っていらっしゃる。流石やね。

しかしクッパは悪者だけど、純で、一途で、愛すべきキャラですね。
「幸せになりたかったのに」の叫びは、妙に刺さってしまったよ。
観終わって、何か新しくマリオのゲームをプレイしたくなりました。
これこそが任天堂の作戦なんだろうな。まさに、タナゴコロの孫悟空。

ひかりとかみと

わんこさんが合宿の間に……と久々にアート展覧会へ。
高島屋で開催されていた「かみがみの森」です。
「かみがみ」は、所謂「紙々」です。切り絵アート。
展示物は写真撮影可。最近はSNS用に、多くなりましたね。

瓶詰の本の森は、とても奥行きがあります。

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照明の色の変化で、雰囲気が変わる。

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近くで見ると、ひぇっ、て思う程に、繊細で緻密。

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近付いて、じーっといつまでも眺めていられそう。

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床の鏡に反射された照明も含め、ひとつの作品。

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この照明具合や、緞帳のような紙の重なり具合に、
「あれ、これって舞台美術に通じるんじゃね?」と思いました。
舞台演出によっては、雰囲気も相まって、すごく嵌りそうです。

繊細で、透明感と奥行きに、ひと匙のグロテスクさもあって、
とても楽しく閲覧させて頂きました。デパート展覧会、侮れないな。
てか、是非一度、舞台美術を手掛けて頂きたいですね。見たいぞ。

現代歌舞伎版の

泣いた……歌舞伎、野田版・桜の森の満開の下、良かったよ……。
これは劇場に行かなかった自分に、愛と涙の全力グーパンだよな。

すいません、相変わらずこの舞台に関しては、語りたくなります。

内容といい、時代背景といい、幽玄な雰囲気といい、衣装といい、
歌舞伎との相性が抜群であろうことは重々承知しておりましたが、
いやあ、遊眠社時代を彷彿とさせる、本当に素晴らしい舞台でした。
元祖をきちんと踏まえた上での進化は、流石は歌舞伎舞台。
この手の引継ぎを繰り返し続けていた、伝統芸能のお家芸ですね。

キャストに関しては、流石に伝統芸能を極めた歌舞伎役者陣、
私如きが口出しする方が野暮なレベルの、抜群な安心の安定感。
特に、勘九郎丈の耳男は、野田耳男のDNAを正当に引き継ぎつつ、
「らしさ」もしっかり出されたはまり役だったのではないでしょうか。
個人的には、野田耳男と並ぶレベルで好きかもしれません。

七之助丈の夜長姫は、正直、登場シーンでは「?」と思いましたが、
物語が進むにつれて違和感が薄れて、馴染んでいきました。
夜長姫は二つの声音を使いますが、特に鬼の声は非常に素晴らしく、
この低いのに「女性の声」と思わせる力量は、流石は女形役者さん。
ただ、「鈴が鳴るような無邪気な笑い声」は、ちょっと難しかったかな。
何処までも無垢で無邪気な永遠の女の子……とはやや趣が異なりますが、
それでも品があり、如何にも姫らしく、且つ醸し出される妖艶さがあり、
これはこれで、歌舞伎の夜長姫としての見応えがありました。

オオアマの幸四郎丈は、ある意味納得のキャスティングでしたね。
ザ・王子様だった天海さんとは異なり、腹黒さが垣間見える正統派権力者。
小綺麗な中にも小賢しさが漂い、朧の森然り、研辰の討たれ然り、
染五郎時代からこういう役どころがホント似合うなあ。<誉め言葉
太々しさ漂う猿弥マナコは、ある意味一番イメージに近い気がします。

古典芸能の役者だけあり、きちんとした土台のある動きは見事で、
所作も美しく、たおやかで、見せ場はきちんとクローズアップされ、
夜長姫の倒れるシーンや、立ち回りなどは「凄い……」と声が漏れました。
三名人がノミを振るうシーンと、特にラストのクライマックスシーンは、
元より古典芸能を意識していただけに、寧ろ彼らの土壇場でしょうね。
ビジュアルの美しさと考えると、ある意味こちらが上かもしれません。
この歌舞伎の「見せ方」の熟知された感は、もう流石としか言えないな。

尚、嬉しかったのが「私のお父さま」と「SUO GAN」の採用。
オペラと外国の子守歌が流れる異色の歌舞伎ですが、
この舞台において、この選曲は本当に神懸っていると思います。

野田舞台は、ある意味歌舞伎とは真逆に、過剰なまでの動きが特徴ですが、
それを歌舞伎舞台で見ることが出来たのは、非常に面白かったです。
案外この歌舞伎版が、一番万人受けが良く、判りやすいのかもしれません。

ぐっとシンプルになった「NODA MAP」での再演と違い、
この歌舞伎ならではの贅沢な豪華絢爛さも、残してほしい魅力があります。
人気のある舞台だし、歌舞伎演目としても申し分ない作品なので、
是非とも、是非とも!! 勘九郎耳男で再演して欲しい所存でございます。

現存するなんて

奈良の春日大社にある国宝殿へと行って参りました。
「最古の日本刀の世界・安綱・古伯耆展 童子切」展示です。
開催当時から、ずっと気になっていたのですよ、これ。
人気ジャンルの影響もあってか、人が多いようだったので、
タイミングを見計らっていたのですが、某ウィルスの影響か、
観光地も閑散として、じっくり拝見することが出来ました。

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奈良の、ナチュラルに鹿がそこにいる事実が、堪らなく愛おしい。

童子切、ジャンルに関しては全くのノータッチなのですが、
実は普日の長編「黒鷲~」の中で、騎士団菊さんが持っている刀が、
童子切のプロトタイプ、若しくは同じ刀鍛冶の銘柄という裏設定。
単純に、時代的に一番不自然ないかな? との理由ですが。
安綱、でしたっけ? すいません、詳しく解っておりません。

一振り、やけに目を引いた刀があったよな。童子切じゃない刀でしたが。
刀や包丁、ハサミに限らず、刃物ってじっと見るのは怖いのですが、
それでも刀に魅入られてしまうという感覚は、なんとなく理解できます。

失くした片割れ

舞台観劇、「ヘドウィグ&アングリーインチ」今回は浦井健治氏ver.です。
なんだかんだと、ヘドウィグはかなりリピート観劇しておりますね。
良し悪しは関係なく、一回の観劇で充分満足する舞台もありますが、
ヘドウィグに関しては何度見ても飽きません。多分、今後も観に行くな。
同じようにリピートを繰り返すヘドウィグファン、結構多いと思います。

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出演者の過激且つ攻めたルックスが注目されるこちらの作品、
一言で言うと「痛く切ない愛の物語」です。失くした1/2的な感じの。

今回の出演者に関しては、前知識全くなしで足を運びましたが、
浦井氏は声量も歌唱力もしっかりしてて、声も良く、充分満足できました。
そしてイクァツは中性的で、長身で、男声での歌声が出せる方でして、
見ていると女性だよね? え、男性? と分からなくなる時もありました。
良いなあ。案外自分の中では一番イメージに近いイクァツかもしれません。
歌が今回は日本語訳されたものでしたが、違和感もなく、良かったです。
唯一気になったのは、役者の動きが乏しく感じるところかな?
恐らくこれは、役者ではなく、演出家の問題でしょうね。
後、今回取れたのが二階席……この舞台に関しては一階席じゃないとなー。
一階席の皆さんは初っ端から総立ちに盛り上がっておりましたが、
二階席ではどうしてもその熱気がやや遠くなっちゃうんですよねー、残念。
ライブ感が感じられる、やや小さめの小屋で上演して欲しい舞台です。

しかし改めて考えると、このヘドウィグ役、かなり大変なんですよね。
ずっと舞台に出ずっぱり、台詞は殆ど彼一人、演技だけでなく歌もあり、
しかも歌唱力ではない、痛々しいまでの心の叫び的ロック魂が必須。
後、個人的に細身ではなく、ある程度ガタイがしっかりしている人希望。
ラストで服を脱いだ時、ギャップを感じる体格が欲しいと思っております。

当日券が残っていたようですが、正直、空席が勿体ない良い舞台でした。
今回姉と一緒でしたが、帰りの電車内でDVDをアマゾっておりましたよ。
ロッキーホラーショー並みに、今後もずっと残る舞台かと思われます。

前売り購入済み

甥っ子君と夏の映画鑑賞に行って参りました。
賛否両論溢れる「ドラゴンクエスト ユアストーリー」です。

皆大好きⅤをベースにした親子三代にわたる物語なので、
流石に今回の尺では絶対的に無理がありますよね。
時間制限故の端折りに関してはまあ仕方ないし、
物語の進行に関しても、これが限界だったのでしょう。
基本、「ドラクエ5を知る人」前提で作られているのでしょうね。
主人公の性格がやや軽く感じることはありましたが、
CGは綺麗だし、アクションも見応えがあるし、声優陣も豪華だし、
キラーパンサーの名前等、ファンならではの遊び心もあり、
お気に入りのモンスターが出現するのも楽しかったです。
後半に差し掛かるまでは、往年のドラクエファンにも、
それなりに一定の評価を得られたのではないでしょうか。

ただ、ラスト近くの「アレ」は反則じゃないのか?!

特にドラクエに思い入れのある方には、絶対に許せない方もいるだろうな。
個人的には……上映中はぽかん顔で絶句してしまいましたが、
それが端からの映画の方向性であるならば、それ以上は何も言うまい。
正直、鳥山絵でない時点で最初からあまり期待値を上げておらず、
スライムが可愛かったのと、想像通りのキラーマシンの動きだけで満足。

それにしても、今回映像を見ていて初めて気が付きましたが、
何故か自分の中でのゲマの声は、フリーザ様の声だった模様。
尚、吉田氏の白熱の演技に不満は全くありません。めっさ嵌ってました。

正月は映画鑑賞

久し振りに映画を見ました。「超高速! 参勤交代」です。
某動画サイトの期間限定無料視聴でしたけどね。

惑星ピスタチオ時代から蔵之介さんのファンですが、
改めて、やっぱカッコいいですねー。良い役者さんだなあ。
思った以上に立ち回りも綺麗で、品がありました。
てか、この映画、色々と役者陣が面白い。
役者をしている方が好感度の高い上地氏とか、
口を開く度に妙に期待してしまう西村氏とか、
ザ・嫌な悪役を存分に堪能できる陣内氏とか、
田舎者ながら頼れる側近武士メンバーズとか。
コメディながらもちゃんと見応えのある殺陣も織り込まれ、
時代劇らしいお約束展開もあり、とても楽しかったです。

だらだらとおせちを食べながら映画を見る……そんな至福のお正月。

只今桜の森ロス

「ここであなたも耳を二つ失ったのだもの」
「わたくしも、妹とお父様をなくすだけのことよ」
<「贋作・桜の森の満開の下」の台詞より引用



劇場に展示されていた、舞台一幕目のセットの模型。こちらは中休憩ver.

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引き続き、「贋作 桜の森の満開の下」話を。まだ語り足りねえ。

オオアマ、夜長姫、耳男、マナコが中心の本作品。
ポスターでは、夜長姫が「鬼」であるかのように表現されております。
でも自分の中では、ビデオの若松氏の迫力も担ってか、
一番「鬼」に近いのはオオアマだなと思っておりました。
でも今回の舞台を観ていると、やっぱり全員が「鬼」にも思えてきました。

オオアマ→クニ造りに憑りつかれたオニ
夜長姫→オニと思われがちだけど、オニを見ることが出来るヒト
耳男→呪いでオニを生み出した人、芸術のオニ
マナコ→乱暴で人殺しの山賊、世間的に一番典型的なオニ

今回の天海オオアマを見ていると、一国の王たる者としては、
「オニ」になることも、また必要であるのかもしれないかなと。
天海さんは宝塚退団後、初の男役だったのでしょうか?
今回は、余り男役を意識せずに演じているようにも思えました。

毬谷夜長姫はナチュラルに鬼を引き連れていたのですが、
深津夜長姫はちょっと違っていて、奔放さも薄まっていたかな。
人首のおもちゃも無くなったしね。だから「鬼」要素が低くも感じます。
どうしても自分の中での理想の少女像「毬谷夜長姫」と比較しがちですが、
決して深津夜長姫が劣るという訳ではありません。これが役者の個性。

妻夫木耳男は、改めて考えると、ちょっと現代っ子っぽいのかもな。
登場人物の中では一番「普通」に近い配役なので、強烈な個性が無く、
その癖マナコやオオアマと対比される面も多いので、意外に難しい役かも。
ひとつ挙げるなら、「無自覚に流されやすい」というキャラクターを
もちっと醸し出してほしかったかな……って、偉そうな事を言ってみる。

終演後、展示されていた模型は二幕目のセットに変わっておりました。

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実は当日券に並んだのは勿論、3~4時間もチケットに並んだのは初めて。
ええ、全く後悔はしていません。自分以上の猛者もおいででしたし。
当日は、コンビニでお菓子を多めに買って、
お尻が痛くならないようにクッションのある折り畳みマットを持参して、
寒さに耐えられるようにブランケットも持って、
ステンレスボトルにスタバのティーラテを入れて、
絶対退屈するだろうと予測して3DS片手に、万全の態勢で挑みました。
幸い、並ぶ場所も屋内だったので然程の過酷さはなかったし、
黙々とゲームをやっていたので、時間もあっという間に過ぎました。
それでもまだクリアできていませんでしたけどね、ドラクエ11。

・1回目→当日券・三階立ち見
・2回目→当日券・キャンセル待ち券での三階見切り席
・3回目→前売り券・二階最前列、しかも花道上の席
・4回目→当日券・一階前から二列目の見切り席

改めて振り返ると、遠距離、中距離、近距離と楽しむことが出来ましたね。
特に職場の人に協力して貰った三回目の席は、予想外に良くて、
劇場スタッフさんにこの席に間違いないか、確認してしまいました。

「これだけ観たら、満足したんじゃない?」とも言われましたが、
正直足りません! 東京公演にも行きたいなあ……無理だけど。
そして、こっそりと心のこりが二つだけありまして。

ひとつ・花びらを一枚欲しかった

いえね、タイトル通り、桜の花びらが散りまくる舞台でして、
折角舞台に手が届くほど近い席に座ることが出来たので、
記念にこっそり1、2枚ばかり失敬したかったかなーなんて。

ふたつ・お隣の席の方をナンパしたかった

前売り券待ちの列でお隣に並んだ方が、とても気さくな美人さんでした。
チケットをゲットしてシートに座ってから少しだけお話をしたのですが、
まあわざわざ当日券に何時間も待つ方なので舞台がお好きなのでしょうが、
お互いの舞台の好みがめっさ似ていて、すげえシンパシーを感じました。
これ、絶対何処かの劇場ですれ違っていたクチやん! レベル。
野田作品はお好きなようですが「~桜の森」は今回が初観劇だったらしく、
つい「今回は複数回この公演を観た」と口にすると驚かれたのですが、
上演後は「その気持ちが分かった。九州公演にも行きたくなった」と
話されておいででした。私も東京公演にも……<以下略
普段、舞台について語り合える知人が殆どいなかったので、
年齢的にも非常に近そうな方でしたし、本気でお友達になりたかったです。

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劇場では、パンフレットと共に、戯曲本も販売しておりました。
とりあえず購入。二冊目だけどね。歌舞伎版の舞台も見たくなってきたな。
難解だ、よく分からない、との感想を持つ方も少なくない野田作品ですが、
原作ありきの作品や贋作系は比較的理解しやすのではないでしょうか。

読みはニセサク

観劇して参りました! NODA・MAPの「贋作・桜の森の満開の下」!!

変動しがちな「この目で観たい舞台トップ5」内一位を不動に保ち続けた、
憧れであり、舞台に嵌った切っ掛けの作品であり、自分の中での原点。
こちらの作品が好き過ぎて、坂口安吾の原作を読み、戯曲本を買い、
ビデオテープ(の時代でした)を擦り切れるまで繰り返して観て、
作中使用曲をipadに入れ、未だに作中の台詞を殆ど暗唱できます。
本作を生観劇したくて、舞台好きになったと言っても過言ではありません。

すいません。この舞台に関しては延々と熱く語りがちになってしまうので、
あまりにキモ過ぎて他所では口に出来ないので、ここで語らせて頂きます。
以下、激しくネタバレするので、これから観劇する予定の方は要注意。



今回は名作の再演でもあり、豪華すぎるキャストの面々も手伝ってか、
取り難い野田舞台のチケットの中でもトップクラスで取り難かったです。

ポイントカードの特別先行予約(自分と姉の)→アウト
ネットの第一次先行予約→アウト
(父親の)クレジットカードのプレチケット→アウト
ネットの第二次先行予約(職場の人と三人体制)→アウト
ネットの最終プレ予約(職場の人と四人態勢)→職場の人が1枚ゲット!!
一般販売開始→玉砕

そんなチケット運の悪さをここぞとばかりに如何なく発揮しつつ、
運が無いなら努力でカバーすれば良いじゃない! と当日券に並び、
ゲットしたチケット含め、なんとか計四公演を目にする事が出来ました。
もうね、一回目は三時間並んで当日券をゲット出来たのですが、
窓口でチケットを手にした時は、涙目になっておりましたよ。歓喜で。

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さて、ここでまずは簡単に「贋作・桜の森の満開の下」のご説明を。
この舞台は、現在日本を代表する演出家野田秀樹氏の作品であり、
同氏が主宰した伝説の劇団、夢の遊眠社にて1989年に初演された作品。
「贋作」と頭につく通り、元は坂口安吾の同名小説と、
「夜長姫と耳男」という短編がミックスされた内容になっております。
故中村勘三郎さんも惚れ込んだ作品で、歌舞伎舞台にもなりました。
実は再演自体は二度ほどありましたが、一度目の再演の後この作品を知り、
二度目の再演は東京のみの上演だったので、観ることは叶いませんでした。
キャストも新たに満を期した今回、なんと17年ぶりの再演となります。
因みに自分が観たビデオは、一回目の再演のものでした。

野田作品の特徴は、言葉遊びと、めくるめくスピード感が挙げられます。
早い台詞回しに流されがちな言葉が、実はちゃんとそれぞれ意味があり、
無駄に思いがちなあれこれも、緻密に計算されたものだったりします。
なので、一度観た時よりも、二度目、三度目になって初めて意図に気付き、
「そうだったのか!」と新たな発見に鳥肌&驚愕することもしばしば。
この手腕は本当にお見事で、舞台戯曲云々をすっ飛ばして、
自分の中での創作のお手本というか、目指すもののひとつになっています。
本作品でもそんな氏の作品の特徴が、如何なく発揮されております。
舞台上での世界の作り方といい、ビジュアルも踏まえた演出といい、
この人ホントに天才なんだ……と改めて思い知らされました。

因みに氏の言葉遊びには、自分も影響を受けた自覚があります。
昔この舞台を見た直後、余りにも衝撃を受け、いてもたってもいられず、
それを消化する為に書き上げたオリジナル小説もありましたっけ。
(輝夜姫異譚・サイト掲載&削除済み・前はオリジナルも掲載)

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「”耳”に”心”がついた所で、恥と言われるだけじゃないか」
「カニクニを見て、ヒニネニ持つ夢。オニマニ受けて、ムニシニました」
「お礼に奴隷とは綺麗とは言え無礼だ」
<「贋作・桜の森の満開の下」の台詞より引用



さて、本公演の感想を。上記のものは、序章に過ぎません。
一回目の再演との比較がありますので、不愉快な方は要注意。

マナコは、キャストを聞いた時点で自分の中ですとんと嵌りました。
舞台を観ても、その予想に違わぬそのまんま。外れのないキャスティング。
気の小ささや臆病感は、羽場マナコよりも滲み出ていたと思います。
ただ、過剰なまでの動きが特徴の遊眠社の舞台の印象があっただけに、
極端に動きが少なくも感じました。こんな動かない役者だったっけ?

注目の天海さんのオオアマは、違うことなく「ザ・王子様」でしたね。
若松オオアマは天井桟敷仕込みの過剰なまでの身体能力と相まって、
重箱の隅っこが変態な王子様(勿論誉め言葉)でしたが、
こちらは常にキラキラエフェクトがかかっているように見える謎仕様。
あんな人が近くにいたら、王子様過ぎてとても正視できません。
立ち姿が舞台に映え、声を小さくしても不思議と台詞が聞き取りやすく、
もうあれやね、この人。日本の演劇界の至宝ですわ。リアル姫川亜弓さん。

耳男は、なんだか元気で威勢がいい感じ? 決して悪くはありません。
ラストの泣き方は、ちゃんと野田耳男を引き継いでいて安心しました。
個人的に「泣き方」の演技に関しては、「~トトロ」のさつきちゃん然り、
綺麗に涙を流すより、みっともない泣き方の方が胸に来ます。
野田耳男には無かった花びらを掛ける演出も、すごく良かったです。
でも時々、台詞回しに「?」と思う節も見受けられました。
これは、演者の脚本の解釈の違いなのかもしれません。

そして夜長姫は、ヒデキ調の絶叫系かな? 
夜長姫は桜色と呼ばれる二通りの声を出して演じる必要があるのですが、
無邪気な笑い声は可愛らしく、低い声には迫力がありました。
得体の知れない怖さは伝わり、これは何だろう……と考えた結果、
どうも白石加代子さんと被るものがあるように思いました。
深津夜長姫も作品全体から見ると全く問題はないし、充分力が溢れ、
彼女としての夜長姫を全力で演じていたのが伝わり、好感がありました。
ただ、ずっと自分の中にあった「理想の女の子」としての夜長姫とは、
正直、自分でもびっくりするぐらい違っておりました。
毬谷夜長姫の品のある透明感と、何処までも悪意のない無邪気さと、
無垢で奔放な純真さは、彼女でしか成し得ないものなのだろうな。
これはあくまでも好みの問題。
それを深津夜長姫に求めるのは、多分間違っているのでしょう。

台本も一部変わりましたね。勿体ないと思う箇所もありましたが、
監獄とゆえんちに関しては成程、改変後の方が良かったです。
あとエンマ様の人助けエコーは、なんかすごいツボに嵌りました。
それと音楽が、今回は全て完全オリジナルに変更。著作権の関係かな。
個人的にはクライマックスの「Suo Gan」と「私のお父さん」が好きで、
特に自分の中では「桜の森=Suo Gan」だったので、これはちと残念。

因みに本公演で、最も進化したと感じられたのが、アンサンブルの演出。
これが本当に素晴らしい。遊眠社の頃より、更に洗練されております。
特にテープと紙を使った演出が非常に面白い。「THE BEE」の流れかな?
すっきりしてて、好み過ぎて、自分のツボをグイグイ刺激してくれます。
この手の演出は野田さんならでは。やっぱりこの人、正真正銘の天才だわ。

……と、長々語りましたが、舞台は本当に、本っ当に良かったです。

多分現時点で考えられる、最高に近い形でのキャストではないでしょうか。
憧れの舞台をこの目で観ることが出来て、空間を共有することが出来て、
同世代を生きることが出来た自分の幸運に、心の底から感謝します。
最近少々劇場離れしておりましたが、改めて舞台の良さを実感。

キャストの皆さん、関係者の皆さん、野田秀樹さん、舞台の神さま、
素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。

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