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休日スパゲッティ

5月のお題、「パスタ」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、楊太です。



僕だって、結構頑張っているんですよ。
すごく奔走したんです。すっごく。

テーブルに突っ伏してぶつぶつ呟く声を、背中越しに耳に入れる。
トマトソースは、鍋の中でことことと音を立てている。
その隣のコンロで、フライパンにベーコンとたまねぎを投入した。

やれああだこうだと、いつも難癖ばっかり付けられて。
笑って聞き流せば、その笑顔で騙すのか…なんて言われるし。

フライパンに、出来上がったトマトソースを入れる。
馴染んだ所で生クリームも加え、塩コショウで味付け。
物足りないコクは、粉チーズで補った。

今日だって休みなのに、わざわざ出社してきたのに。
結局向こうの都合でこうなって、する事も無いし帰って来たんですよ。

湯の中で踊るパスタは、程良い固さのアルデンテ。
ざばりと湯をきると、そのままフライパンのソースに絡めた。
器に盛って、オリーブオイルをくるりとかける。これが秘密の隠し味。

もう、師叔っ。僕の話を聞いていますか?
絶対、どうでも良い事って思って、聞き流しているでしょう。

むすっと唇を尖らせる奴の前に置いた、トマトクリームソースのパスタ。
折角なので、冷えたワインもグラスに注いで隣に並べる。
そうして、むくれた顔の頑張り屋の額に、御褒美のキスをしてやった。



未だかつて無いほどの糖度に驚愕。
なんだ、自分にもできるじゃないか!

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