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これが出来ません

6月のお題「オムレツ」「キャンディー」「ジュース」

「オムレツ」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、楊太です。



とんとん…と手首を握り拳で叩くと、フライパンの中の卵が、
意思を持つようにくるくると綺麗に丸まった。
程良い半熟のオムレツが、白い皿の上にするりと滑り込む。
ケチャップを落として、はい、出来上がり。
「すごいです、すうす」
魔法のようなそれに、楊ぜんは尊敬の眼差しをきらきらさせる。
「ほれ、早く食べないと、幼稚園に遅れてしまうぞ」
「はい、いただきます」
テーブルに着くと、きちんと手を合わせ、香ばしいロールパンにかぶりつく。
「すうすのつくったごはんは、なんでおいしんですか?」
疑問符がいっぱい詰まった瞳に、街の洋食屋コックの太公望は、
苦笑をしながらお弁当を幼稚園鞄に入れる。
本日のキャラ弁は、楊ぜんの好きなキャラクターだから、
きっと嫌いなピーマンも、残さずに全部食べてくれるだろう。
「楊ぜんが大好きだって思いながら作るからのう」
牛乳の髭を作りながら、そうだったのか…と美味しいご飯の秘密に納得する。
「じゃあ、ぼくおおきくなったら、すうすにごはんをつくります」
「そうか、楽しみだのう」
「すっごくすっごくおいしくつくれますよ、ぜったいです」
窓の外、鳥の声に交じって、送迎バスのクラクションが聞こえた。



ちびっこを育てるコックさん。死んだ妹の子供とかそこらへんで。

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