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秋の味覚の代表

10月のお題「炊き込みご飯」「パイ」「中国茶」

「炊き込みご飯」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、悟チチです。



「これ、食べるだか?」

窓越しに差し出されたそれに、首を傾げる。
放課後、部室へと向かう最中、体育館へと続く校舎の裏手。
廊下の窓身を乗り出して、こちらを見下ろすクラスメート。
差し出された手には、手の平大のアルミの包みが二つ。

「何だこれ」
「栗の炊き込みご飯だべ」

調理部の実習で作ったおむすびだべ。
沢山作って余ったから、おめえにやるだよ。

「おっ、サンキュー」

ラッキー、と手を伸ばすと、見計らってひょいと距離を取られた。
但し…そう言って、きりりと眉を潜めて。

「オラから以外は、絶対受けとらねえって約束してけろ」
「何で?」
「何ででもだべ」

約束してくれたら、これをおめえにあげるだよ。
どうする?挑むような視線に瞬きし、まあ良いかと頷く。

「判った、おめえ以外から貰わなけりゃ良いんだろ」

約束する。そう言うと、彼女は満面の笑顔で、おむすびを差し出す。
受け取ったそれに、早速かぶりつく様子に、彼女はにこにこ笑う。
うめえだか、おう、そっか良かっただー。
頬杖をついて見下ろす彼女の視線が、やけにくすぐったい。
それを誤魔化す様に、親指についた米粒を、ぺろりと舐めた。



朝起きて、部屋の窓を開けたら、金木犀の匂いがしました。
金木犀前線通過中。

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