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謝るのもお仕事

「マカロン」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、DB・カカチチです。



「この度は、誠に申し訳ございませんでしたっ」

深々と頭を下げに来た担当責任者は、初めて見る顔だった。
大きな瞳に、一つに束ねた艶やかな黒髪が印象的な、小柄な女。
担当が変わったばかりらしいが、最初の仕事がこれじゃ気の毒な話だ。
今回のミスだって、おそらく彼女は何も知らなかっただろうに。
まあ、事前に気付くことが出来たし、大事には至らなかった。
次から気をつけて貰えれば、とりあえずこちらとして構わない。
ただ、一応仕事上の責任として、形ばかりの厳重注意は伝えた。

泣き出しそうに歪められた大きな瞳。
心底申し訳なさそうに寄せられた眉根。
ひたむきに引き締められた丸みのある唇。

思い出し、小さく吹き出す。
真面目そうな奴だったな、妙な所で馬鹿正直だったし。
世間ずれしていない所は初々しいが、あんな調子でこれから大丈夫か?
あいつ、なんて名前だったっけ。
お詫びの品にと持ち込まれたマカロンを齧り、彼女の残した名刺を手に取った。



業者さんと営業さんかな?
自分で書いててアレだけど、お詫びにマカロンってのは無いと思う。

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