11月のお題、「紅茶」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、APH・英日です。
ファッションモールの一角にあるごく小さな店舗。
高めのスツールに腰を下ろし、記入したアンケート用紙を手渡す。
彼はそれを受け取ると、翡翠色の瞳を瞬きさせ、ペンで何やら記入した。
最近人気のあるらしいこの店は、同じ職場の女性同僚にお勧めされた。
病気と言うほどでもないが、何となく体調が優れない人向けに、
個々の体質に合わせて処方してくれる、ハーブティーの店らしい。
調合するのは、本場の国からやって来た専門家。
彫りの深い整った横顔に、成程女性層の人気が出る訳だと納得した。
目の前に置かれたのは、綺麗な透明のカップ。
貧血、滋養、冷え症、その他の効用の詰まったハーブティーからは、
暖かな湯気と共に、独特の香りがゆらりと立ち上る。
じいっと向けられる酷く真剣な翡翠の瞳を受け止めながら、
飲み慣れないそれに、恐る恐ると口を付けた。
「…あ、美味しいです」
予想以上に飲みやすい口当たり。
思わず零れた一言に、彼は酷くほっとしたように微笑んだ。
この笑顔を見る為にまた来たくなるような、そんな笑顔だった。
ハーブティーの本場って何処だ?