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凶悪なる追跡劇

10月のお題、「中国茶」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、楊太です。



「これは…不意をつかれましたね」

衝撃に利き手が痺れる。弾き飛ばされた銃が、音を立てて転がった。
足元には、無残に散乱した飲茶と食器と、うつ伏せに倒れたボスの死体。
そして目の前には、硝煙の香りの強い、黒光りした銃口。
ぴたりと眉間に標準を当てて、油断を許さない位置で彼は目を細める。
テーブルを汚す香り高い花茶が、ぱたりぱたりと床に滴を落としていた。

「安心せい、おぬしは殺さぬ。わしの受けた依頼はこやつだけだ」
「…ここから逃げられるとお思いですか?」

騒ぎを聞きつけた部下が、店を囲むのも時間の問題だろう。
この地域を取り仕切るチャイニーズマフィアの包囲網は伊達じゃない。
しかし、算段があるのか、幼い顔立ちの彼には余裕がある。
テーブルの上に乗っている、未だ無事な茶碗を取ると、一気に飲み干した。
ぺろりと舌舐めずりすると、にいと不敵に笑う。

「ならば、わしを捕まえてみよ」

成程、これが彼流の宣戦布告らしい。

「ええ…必ず、貴方を捕まえて見せましょう」

好戦的に笑み返す。
さあ、追跡劇が始まった。



用心棒と殺し屋。続きが読みたいです。

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