記事一覧

ずっと僕と一緒に

12月のお題「シチュー」「ドーナツ」「ワイン」

「シチュー」より小噺。
ジャンル違い要注意。
以下、APH・露日です。



煌々と焚かれた暖炉、柔らかいベッド、心地よい毛布。
寒さから隔絶された小さな部屋。
温もりが閉じ込められた小屋は、ぬるま湯のように暖かい。
扉ひとつ向こうの、吐息まで凍らせる極寒の雪野原とは、天地の違いだ。

「さあ、召し上がれ」

大柄に似合わないような木訥とした瞳で、彼はにこりと笑った。
差し出されたのは、温かいシチュー。
木の器に盛られたそれを両手で取ると、急激に体が空腹を訴える。

これを食べると、もうここから出られなくなるかもしれない。
黄泉の国の食べ物を口にした者が、地上へ帰れないお伽噺と同じく。

掌から伝わる器の温もりは、何か大切な事を麻痺させてしまう。
酷く残酷な笑顔に見守られ、今私は考えあぐねている。



スキーでお昼休憩した後、外に出るのが嫌になるあの感じですな。

コメント一覧