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夜の海に沈む

7月のお題...百合・海底・流れ星

「百合」「海底」「流れ星」より小噺



百合の花は、死者に贈る花なの。
芳香が強いから、腐臭を隠してくれるの。
そう言って、彼女は両手一杯の百合の花を差し出した。
背後に見える月が、水面に波打つ。ゆらり、ゆらりと。
にたりと笑う彼女の唇は、明らかに死者の色。
たゆたいながら拡がる髪と、百合の花。
夜光虫が星のように輝き、流れる筋を描きながら取り囲む。
浮かんでいるのだろうか?否、沈んでいるのか。

―――ここは、何処だ?



ナイトダイブ中、タコにちょっかい掛けたら、墨を吹きつけられました。

コメント一覧

さき 2009年07月01日(水)01時44分 編集・削除

あーーーーー!!!
こういうの好き!すごく好きです!!!

特に最後の一文がたまりません。
今回はちょっと好きすぎてまともにコメントできませんすみません(おまえ…!)

深海と百合って、想像するとぴたりとはまりますね。
しかも夜。波間に狂ったように踊る月の残滓が目に浮かびます。これはナイトダイビング経験者でないと実際にはわからないのでしょうね。悔しい…体験したい…!
いやーそれにしても最後の一文が良すぎます(大事なことなので2回言いました)。ここは何処だ、と問うことで物語全体が不気味で不思議な雰囲気に締まっていると感じました。

いつも速攻レスで申し訳ありません…
どんだけcottonさまのブログに張り付いてるの私…!

でも本当この一連のお題で色んなcottonさまの文章に触れられて嬉しいです。
今後もちょう楽しみにしております!(≧▽≦)

cotton 2009年07月01日(水)23時41分 編集・削除

こんばんは、さきさま

昔は結構謎系の話が多かった…って話をした事がありましたが、
つまり、こんな感じのものばかり書いていた時期があったのですよ。
雰囲気を重視しすぎて、あやふやで、良く分らない物ばかりでしたけどね;
この手のものはセンスが非常に重要だと痛感して、
今はストーリー性を重視してお話を書くことが多いのですが、
さきさまに「好きだ」とのお言葉を頂けて、とても喜んでおりますv
むしろ、さきさまの方が、この手の話はお得意そうですよね。
是非とも拝見致したく存じます、うふふふ…。

夜の海は、街灯や月があれば、意外に視界が利きますよ。
基本は海底や岩陰ばっかり見ているのですが、
ふと何気に水面を見上げると、ちょっと不思議な気分になります。
…と言いつつ、これは旅行前に書いていたものですけどねー。

こうして嬉しいコメントを頂けると、本当に心の糧になります。
現在のお題更新のテンポの良さは、さきさまの御力に因る所が、
とっても大きいと思われます。有り難い事で御座います。<深く御辞宜
コメント、本当にありがとうございました。