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毒の中にも母が

キャストを一新した蜷川幸雄演出「身毒丸」を観劇。
これ以上は無いとも言われる白石&藤原キャストに感動したクチですが、
大竹しのぶ女史の配役には非常に興味がありました。
尚、今回はキモイ程語るので、要注意。

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大竹撫子は瑞々しく、しなやかで、「女」としての撫子を、
流石の演技力と貫禄で見事に演じ切っておりました。
白石撫子が残酷なまでに母性溢れる「母親」なのに対し、
大竹撫子はまだ若々しい「女性」だな。これは演出の違いでしょう。
新人の身毒丸は、やや弱くて滑舌が気になりましたが、
それでも初舞台でここまで頑張れば立派。
ただ、これはあくまで脇を固める役者陣がしっかりしていたことと、
バランス感覚の良い大竹女史が相手役だった事も要因。
あと、個人的に身毒丸のイメージは、華奢で、線が細く、
「男」になる前の中性的で小柄なイメージを持っていたので、
声が低くて長身の彼に、ちょっと違和感を感じました。

演出も微妙に変わっていて、特にラストには衝撃を受けました。
今までの「その後の二人の行方は、誰も知らない」的なものに対し、
今回は行きつく所まで行っちゃった感じ。原作により近くしたのかな?
あと穴のシーン。「母」達が半狂乱に我が子を探すシーンが無くなりました。
あれにぞっとしただけに、少々残念。

しかし、今回の舞台を観ると、
改めて白石&藤原コンビが如何に突出して特別だったのか解りますな。
白石女史の、登場した瞬間に空気が変わるあの存在感は他では得られないし、
そんな彼女に食らいついて行ける配役は藤原氏しか思い当たらない。
あの、皮膚の毛穴からじわじわと侵食されるような麻薬的な空気とか、
抱き合っているだけなのに観ていて居たたまれなくなるような猥褻感とか、
艶めかしく、背徳感溢れる、禁断の「素敵な悪夢、寺山ワールド」は、
やはりあの二人だからこそ成し得たのでしょう。

ただ、これだけ言っているけど、舞台に関しては総じて高評価。
完成度は高く、このキャストしか知らない人は、充分な見応えがあるでしょう。
特に大竹女史には、この役を引き受けた勇気だけでも拍手を送りたい。

おまけ。劇場内のバーカウンター。

ファイル 742-2.jpg

舞台に合わせた特別メニュー。
こんなのがあるんですね。面白いな。

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