記事一覧

彼との旅の終着点

一泊二日の岡山旅行の目的は、実は観劇。
維新派公演「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」を観に行きました。
2007年より始まった、20世紀三部作の最後の作品です。
今回は瀬戸内国際芸術祭の参加作品とあって、
瀬戸内海に浮かぶ小さな島、犬島での野外公演でした。
図らずとも、これを千秋楽で見る事が出来たのはラッキーでしたね。

奥行きのある特設会場は細部まで凝っていて、手抜きが無いのは流石維新派。
夕日の沈む角度まで計算され、上から見るとトカゲ型になっているそうです。
長細い尻尾の坂道を上って、胴体が客席、頭が舞台って…凄い大掛かりだな。

タイトルには台湾と有りますが、日本から東南アジアが舞台。
特に中盤からクライマックスへの盛り上がりは絶妙、引き込まれます。
ただ、個人的には前回の「呼吸機械」の方が好きだったかな?
ストーリー性がある方が好きなので、これは単純に好みの問題でしょう。
それでも、集大成と呼ぶに相応しい、本当に素晴らしい作品でした。

公演を終えて島の最終便の船に乗って出港の際、
役者さん達が皆で手を振って見送ってくれた事は、きっと忘れないと思う。
普段の公演で維新派さんは客出しもしないし、現実との隔絶感を保つのに、
観客と距離を置いているような印象を勝手ながら持っていたので、
驚きと共に感激してしまいました。すごく嬉しかったな。

ファイル 412-1.jpg

「維新派の野外公演は、旅を始める所から開始される」
そう評されてもおりますが、成程今回の公演で納得しました。
とにかく、島に足を踏み入れたときから、寧ろ定期船に乗った時から、
別の場所へとトリップするような気分を味わえます。

これだけの大作を全作通じて体感できた自分は、とても幸運だと思います。
素晴らしい舞台と他に類の無い世界を、本当にありがとうございました。
そして更なる次回作、心待ちにしております。

全部で十三演目

京都祇園祭の行事のひとつ、狂言奉納を観て参りました。
八坂さんの境内にある能舞台で催されるのですが、
かなり沢山の演目が上演されるので、見応えはばっちり。
椅子も並べてあって、テントも張ってくれているし、
大人も子供も観光客も演技の終わった演者も一緒に観れる、
とても和やかでアットホームで贅沢な催しでした。

面白かったのが、青い目をした演者が二人も居た事。
茂山門下?趣味での参加?詳しい事は判りませんが、
発声もアクセントも見事でした。素晴らしいです。

ファイル 405-1.jpg

朝から頑張って観ておりましたが、後数演目と言う所でダウン。
最後まで見る気満々でしたが、頭痛がしてきたのですよ…脱水?
この夏の京都の炎天下、水を持参しなかった自分のバカバカバカ!
それでもトイレにも行かず、休憩も無く、4時間近く観れたのかな?
かなり満たされました。ビバ、祇園祭。

カッコよすぎるぜ

ファイル 341-1.jpg

劇団新感線RX「薔薇とサムライ」を観劇。すっごく面白かった!
何よりも特筆すべきは、天海祐希女史の素晴らしさ!!!
ジャックスパロウで凛々しく、オスカル様で麗しく、王女様で美しく、
華があり、ポーズが決まり、スタイルも良く、舞台で映えて、
歌って良し、踊って良し…流石は元宝塚、スター性が半端ありません。
トップになるべくしてなった人なんだろうな。圧倒的。超ノックダウン。
特に今回は、男役経験者だからこそのはまり役でした。
そして古田氏は、以前の「五右衛門ロック」同様、粋で頼れる男前。
本当、舞台と映像では全然違う役者です、男も惚れるカッコ良さ。

舞台は相変わらずの新感線節。派手で、アクションあり、笑いあり、
エンターテイメントの全てを凝縮した、王道の超娯楽大作。
宝塚を意識したノリも楽しく、視覚効果をふんだんに盛り込まれ、
舞台と言う空間の使い方の巧みさには、毎度本当に感服致します。

次回公演はネタ物なのかな?こちらも今から非常に楽しみです。

寝る前に開いて

読書覚書

・「ウランバーナの森」奥田英朗
主人公のモデルは、故ジョン・レノン氏。
途中引っ掛かる所もあったのですが、読み終わると成程納得。
読み始め、余り好みな話じゃないかな…と思っていたのですが、
進む内にどんどん引き込まれました。この手腕は流石。
作者氏の文体が自分に合うんだな…と再認識。

・「かもめ食堂」群ようこ
御存知、話題になった映画の原作小説。
非常に読みやすい文体は相変わらず。数時間で読了出来ました。
映画を見た後に読んだので、登場人物の過去なども書かれていて、
改めて成程ーと思うことも多かったです。
事件らしい事件も無い話ですが、それがほのぼの癒されました。

・「調味料を使うのが面白くなる本」青木敦子
小説に非ず。調味料の豆知識本です。
いつも使っている調味料の使い方に、簡単なレシピと雑学、
意外な活用法などもあって、改めて成程と知ることができました。
使い切れずにキッチンや冷蔵庫に眠ったままのものや、
気になりつつも買わなかった調味料が、使ってみたくなります。



最近本屋さんに行くと、甥っ子の影響もあって、
つい児童書、絵本コーナーへと足が向かっちゃいます。
で、買うのは良いのですが、全部自分用ばっかり。
姉に呆れられていますが、懐かしいタイトルを見ると、
やっぱり欲しくなっちゃうんだよなー。
絵本大好き。眺めているだけで嬉しくなります。

人の心を持つ毒虫

舞台「変身」、3回目を観劇。一つの公演をこれだけ観るのは久しぶり。
今回は当日引換券を急遽取りましたが、まさかの前から4列目。
幸運にも3回それぞれ、遠、中、近距離で観る事が出来ました。
大阪最終日だけあり、カーテンコールは4回、スタオベの大盛況ぶり。
公演終了後は「下宿人」役の俳優さんがロビーに登場して、
サイン会を行っておりました。長蛇の列に断念しましたけど。

これでこの生舞台を二度と観る事がないと思うと、実に寂しいです。
次に日本で再演する際には、恐らく演出家が変わっているでしょうね。
それを思えば、これだけ堪能できたのは、本当に良かったです。

ファイル 313-1.jpg

舞台に「完璧」は無いけれど、限りなくそれに近い作品の一つ。
一生忘れません。素晴らしい作品を有難うございました。

クロッカスの花が

S・バーコフ氏の「変身」観劇。東京公演に続いて2回目です。
舞台でパンフレットを買うのは、物凄く久しぶり。
今回は2階席だったので、舞台の奥行きが良く見えました。

東京公演と比較してみて、最も違いを感じたのは3点かな。

・グレゴールの動きの切れに、更に滑らかさが加わった
・ザムザ夫人がパワーアップ、こりゃすごい
・やっぱり関西では、カーテンコールが一回多い

ラストシーン。照明の当たった主演氏の最後の動きに、
「かさ…」という、軽く乾燥した物音を聞いた気がしました。

ファイル 310-1.jpg

一生心に残る名舞台。立ち会えた自分の偶然に感謝します。

おむすびたべたい

更に、レンタル映画をもう一本。

「かもめ食堂」
こちらは「南極料理人」と「めがね」のフード担当が同じ方で、
原作が群ようこ女史と知って、食指が動かされました。

成程、女性が作った作品らしい、お洒落心が満載です。
フィンランドの町並みや食堂のキッチン、洋服やエプロン等、
どれも可愛くて、絵になっていて、そして生活感がありません。
すごく憧れますが、カフェ系雑誌の切り抜きみたいなもの。
現実に考えてニセモノな部分が、随所にちりばめられています。
個人的にはこれはこれとしてとても癒されましたが、
映画にリアルを求める人には不向き。大人の女性向けの童話。

味のある女優三人は良いですね。三人三様の個性が楽しい。
そして、料理をする時の音が、非常に効果的に使われております。
観終わった後、何となく台所に立ちたくなりました。

愛すべき野郎共

レンタルしてきた映画、もう一本。

「南極料理人」
久しぶりの個人的大ヒット作品。多分、邦画界屈指の食べ物映画でしょう。
南極観測隊の話ですが、知的な話は殆どありません。ゆるい日常物語。
不自由そうな割には、食べ物はやたらと充実して、皆それなりに楽しそう。
こういった「男子数人集まって馬鹿やっている」ノリって、
女には真似のできない部分で、ちょっと羨ましかったりしますね。
「西村君、…」のフレーズが出ると、判っていつつも笑いが込み上げます。
この手の、狙った感のない、変に可笑しくなる笑いはかなり好き。
野球の掛け声と海老フライが、かなりツボ。判るよ、それ。

手堅い男優陣の個性が、絶妙に相俟って、良い感じにむさ苦しいです。
これ多分、かなりアドリブが入っているんじゃなかろうか。
原作は未読ですが、複数のエピソードを違和感なく繋ぎ合わせ、
何かは無いけど最後まで飽きさせないって、簡単なようで難しい筈。
笑いだけじゃなく、ほろりとするシーンや考えさせられる所もあります。
この監督は、もともと自主映画の人なのかな?巧いなあ。凄い!
大作に押されがちですが、こういった秀作はもっと評価されてしかるべき。

―削除済み―

邦画でDVDを買おうかと思ったのは、もしかして初めてじゃなかろうか。
かなりお勧め。是非ともご覧あれ。
観終わった後、ラーメンとおむすびが食べたくなります。

朝のメルシー体操

レンタルの年間更新ついでに、久しぶりに映画を観ました。

「めがね」
ドラマ性も無く、ストーリー性も無く、盛り上がりも無く、
謎は謎のままに放置されっぱなしで、オチもありません。
人によっては良作にも駄作にもなる、人を選ぶ映画でしょう。
もたいまさこ女史の妙に笑いが込み上げる味のある存在感と、
小林聡美の独特の雰囲気は良い化学反応をしますよね。
あと、女優陣のゆる系ファッションがどれも可愛くて素敵です。

小林聡美女史は、昔から最も好きな女優さんの一人。
人柄が滲み出る自然体の空気は、非常に心地好いです。
特に個人的に好きなのは、彼女の食べ方の綺麗さ。
食事の仕方ってその人となりを表わすと言われますが、
丁寧に、品良く、美味しそうに食べる彼女の姿はお手本にしたい。
お料理する手際の良さも、見ていて小気味良いですね。
某パンのCMで彼女をプロデュースした人は、
目の付け所が非常に良い方かと思われます。ハマりCM。

―削除済み―

そして、ハイジのチーズ発見!

素晴らしき不条理

スティーブン・バーコフ氏演出、森山未来主演の「変身」を観劇。
いやあ、期待を裏切らない、本当に素晴らしい舞台でした。

ファイル 293-1.jpg

この作品は自分の中での「再演希望トップ5」に入る舞台でして、
まさか本当にこの目で見る事が出来るなんて思わなかっただけに、
公演を知った時から、この日をずっと心待ちにしておりました。

完成度が高く、シンプルで、実験的で、時代を超えるであろう名作。
この「グレゴール」役だけは、生半可な覚悟では太刀打ちできません。
演技力の高さだけでは不可能な難しい役に真っ向から挑戦し、
体当たりで臨み、見事に果たしてくれた主演の森山氏には、
叶うことなら両手を握って心から感謝の言葉を述べたいくらいです。
この大役を限りなく完璧に演じたことに、貴方は誇りを持って良い。

この作品と空気を共有出来た自分は、本当に幸運でした。
総合芸術と呼ぶに相応しい、素晴らしい舞台を有難うございました。

ページ移動