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地中迷宮美術館

013瀬戸内国際芸術祭旅行

さて、折角なので地中美術館のご案内を。
その名の通りこの美術館、建物は地中に建設されておりまして、
一見外観は見当たらず、しかし作品は全て自然光で閲覧出来ると言う
他の美術館では見られない非常にユニークな建築をしております。
美術館の設計は、最早直島にこの人ありきの安藤忠雄氏が、
それぞれの展示作品の作家やキューレターと意見交換しつつ手掛けました。
そしてここにある作品は、恒久展示の三作家の九作のみ。

クロード・モネ(睡蓮シリーズ、五作品)
ジェームズ・タレル(オープンフィールド&オープンスカイ&他一作品)
ウォルター・デ・マリア(タイム/タイムレス/ノータイム)
それにプラス、安藤氏手掛けるこの建物も、一作品に加わりそうですね。

空から見下ろせば、地中に丸や三角や長細い建物がチラ見えしますが、
基本それらの建物一つに一作の作品を設置するという、
なんとも大胆で贅沢な展示方法を採用しております。
世界的にも有名なモネの睡蓮を呼び水にしたこの美術館、
でもそれ以外の作品も、それに劣らず印象深いものばかりです。
興味深い建築物とも相まって、アトラクション気分で楽しめました。

尚、地中美術館は入館するにも整理券が必要でしたが、
展示物を鑑賞するにも入場制限があったりしますので要注意。
でも、モネの睡蓮を展示していた部屋では、偶然にも人の入れ替わりに被り、
常在する美術館スタッフ一人を除き、まるっと一人きりの空間で
作品を鑑賞するタイミングを得ることが出来ました。入館制限故の幸運だな。
世界的な名画を一人占めした気分を味わえて、すんごい贅沢気分でした。

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入り口の近辺には、睡蓮のモデルともなったモネの庭を再現した池があります。

作品との一体化

013瀬戸内国際芸術祭旅行

李禹煥美術館を堪能した後は、来た道を戻って地中美術館へ。
……って、すいません。本当の所、地中美術館に大した予備知識は無く、
有名なモネの作品があって、直島では人気があるくらいの認識のみでした。
なので、お安くは無い入館料金と可愛くは無い待ち時間を目にした時、
いっそここはスルーしようかなーとの考えも過ぎっておりました。
でもまあ、折角来たし、再び直島に旅行に来る保証も無いし、
話題とかネタ的な意味でも見てくるかー……な気分で足を運びました。

いや、すっごい良かった。
入館前までの自分を、往復ビンタしてやりたくなりました。
こんな美術館を作った福武財団を、本気ですげえと思いました。

何が凄いって、内部にある珠玉の作品群も勿論ですが、
ひとつの作品に一つの建物という芸術を極めるような贅沢さといい、
それぞれの作品を最大限に生かした空間の作り方といい、
そのスケールといい、コンセプトといい、潔さと思い切りの良さといい、
なんかもう、いろんな意味で衝撃を受けました。

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お金持ちってすごい。そして、その使い方を知っているってすごい。
企画者が本当の意味で芸術を理解していることが伝わって来ます。
こんなお金持ちが存在してて良かったなあと、変な感動をしました。

ミュージアム地区

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港のコインロッカーに荷物を預け、バスに乗りました。
直島は、ざっと大まかに区別すれば見所は三か所に分かれます。
ひとつはこの港を中心とした、宮浦エリア。
そして最初に向うのは、余りにも有名なベネッセハウスエリアです。

港から5分程でバスを下車すると、そこは人気の地中美術館受付口。
入館整理券を貰ったのですが、入館可能時間まで40分程あるので、
先にそこから歩いて20分程の距離にある、李禹煥美術館に行きました。

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李禹煥氏は、現代美術の「もの派」として名高い韓国出身アーティスト。
そしてこの個人美術館の設計は、日本屈指の建築家安藤忠雄氏です。
氏の作品の為だけに作られた特別な空間は、なんとも贅沢で、
こりゃアーティストとして本望だろうな。
氏の作品を目にするのはこれが初めてでしたが、なんとなく、
「外国人が見た禅」のイメージってこんな感じなのかなーと思いました。

中にも入れます

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電車を降りて駅から歩いて五分程の場所に、宇野港があります。
その移動中、ぱらぱらと雨が降り出して来ました。あちゃー。
前日の犬島では、やたら天気が良くて夏並みに暑かったんですけどね。
尤もそのお陰で、夜になっても冷えなかったのは幸いでした。
でも実はその前日は、台風で公演中止になるか否かの瀬戸際だった模様。

さて、港からフェリーに乗って、20分ぐらいかな。
到着したのは、アートの島として名高い直島です。

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直島の玄関口の一つ宮浦港では、赤いカボチャがお出迎えしてくれます。

何処の子たちだ

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のんびり屋台村を見て回って、ステージを楽しんで、さてそろそろ出港。

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野外劇場から港まで、徒歩15分ぐらの距離があったので、
グループごとに固まって皆で夜道を移動していると、
精錬所の長い煙突がライトアップされておりました。
多分、この時期だけ。道案内していた運営スタッフさんも驚いてたな。
それにしても、維新派さんの運営さんって相当大変だろうな……。

犬島からフェリーとバスを乗り継ぎ、そして岡山駅に到着。
共同風呂&トイレの安い宿を予約しておりましたが、
受付すると、「予約した部屋じゃないけれど、こっちの部屋をどうぞ」と、
洗い場付きの広めの独立風呂&トイレ付きの、
広い部屋を案内して頂きました。おおお、ラッキーだ。
もしかするとここ、長期滞在用のホテル&部屋だったのかな?
キッチンのないワンルームマンションみたいな部屋だったぞ。
お湯を張った広い湯船にゆっくり浸かって、体の疲れが取れました。

がやがや楽しい

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維新派の野外公演の名物は、なんといっても屋台村でしょう。
特設会場の隣に、物販や屋台、ミニステージ等を設置するのですが、
ちょっとしたお祭りのような雰囲気になります。
なので実はこの劇団の野外公演、上演中は飲食オッケーなんですよね。

今回の公演終了後、夕食代りに食べたのは、スペアリブサンド。
食パンでリブを挟んだ簡単なものですが、とろとろのお肉が美味しかったな。
美味しそうなものが沢山あるので、いつも目移りしてしまいます。

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離島である犬島での公演では、バスとフェリーでの送迎がありますが、
帰りの便は島到着後に時間の予約をして、そのグループごとに移動となります。
一番早い便のフェリー&バスは直ぐに予約が埋まっておりましたが、
でも、ステージでパフォーマンスもあるし、屋台村で充分楽しめるし、
時間に余裕がある人は、遅めの便で帰る方をお勧めします。

花は咲いている

013瀬戸内国際芸術祭旅行

「家プロジェクト」とは、村の古い廃屋を改築して作品を展示する、
直島発祥、瀬戸内アート独特のプロジェクトになるのかな。
案内所で配布している地図や公式本を見ながら、島を散策して回るのですが、
それがなんだか探検しているみたいな気分になって来ます。
家プロジェクトは撮影不可が多いのですが、屋外展示作品は撮影可。
懐かしさすら感じる風景の中、作品を発見すると、おお! と嬉しくなります。



コンタクトレンズ。レンズの向こう、大きさや見え方は人それぞれ。

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犬島にでっかい犬。物言いたげな目が、妙にリアルで可愛い。

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石職人の家跡。島の石や民家の梁などを使っております。

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前回の芸術祭で最も感動したのが「I邸・眼のある花畑」でした。

案内ボランティアさんに促されて、最初の部屋へ

何も無い部屋の白い壁に、大きな瞳が瞬きしている映像

瞳には、戦争や餓死した子供など、胸に痛い映像が写っている

今度はこちらへと案内されたのは家の外、花がいっぱい咲いた庭の真ん中

あちらをどうぞ……と見ると、正面にある家の壁には大きな瞳の映像

さっきと似ているけれど、でもこちらの瞳には映像が映っていない

最初に見たのは、辛い事とか苦しい事とか悲しい事を沢山見た、
死に直面した老人の瞳をイメージしています。
反して後の方は、まだ生まれたばかりの赤ちゃんのもの。
産まれてくる子供には、綺麗な花が沢山咲いたこの庭にように、
綺麗なものを見せたいと言う、制作者の想いが込められている……との作品。

今回の芸術祭、そんなI邸にも新しい作品が展示されておりましたが、
綺麗な花畑の庭はそのまま残されており、それがなんだか嬉しかったな。

館内は撮影禁止

013瀬戸内国際芸術祭旅行

瀬戸内国際芸術祭とは、瀬戸内海に点在する島々を舞台に開催される、
トリエンナーレ形式の国際芸術プロジェクトです。
現代アートだけでなく、地元の祭事や伝統芸能も含め、
造形、演劇、音楽、映像、建築など、ジャンルは多岐に渡り、
2010年に第一回が開催されてから、今年は更に規模を大きくしての二回目。
総合プロデューサーは地元とのアート事業に実績のある、
ベネッセの名前でお馴染みの福武財団理事長、福武總一郎氏。
……まあ、単純に言ってしまえば、島のあちこちにあるアートやイベントを、
フェリーで移動しながら、歩き回りながら、巡り、探し、見つけ、鑑賞する、
かなり広範囲で大がかりな期間限定のアートイベントですな。
全部の作品を見て回ろうと思えば、一週間は掛かるんじゃなかろうか。

でもこれ、本当に面白いんですよ。
多分一度行ったら、二回目、三回目……と足を運ぶ人、多いと思う。

犬島では、「家プロジェクト」と「犬島精錬所美術館」が主な参加作品です。
精錬所美術館とは、古い銅精錬所跡の建物をリノベーションし、
そのままアート作品を展示している美術館でして、展示内容も勿論、
元工場として、自然エネルギーの工夫を凝らした建築物も非常に興味深いです。
例えば入館直後、一見すると真っ直ぐに伸びている細くて暗い通路なのですが、
実はそれぞれの曲がり角には大きな鏡が設置されており、
その反射を利用して窓から自然光を通すので、照明を使っていなかったり……と、
なんだかアトラクションに入ったような気分を味わえます。
こちらの館内の作品に関しては、三年前と同じでしたね。
三島由紀夫をテーマとしたアートワークですが、スペースを活用した作品は
不思議で、ちょっと怖くて、三島ファンでなくとも楽しめるかと思われます。

近代産業の遺構

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さて、ここで犬島の御案内を。
古くは江戸城や大阪城の採石場として栄えた、瀬戸内海に浮かぶこの島。
最盛期は4000人もの住民がおりましたが、過疎化が進み現在の人口は50人。
端から端まで歩いても、一時間半ぐらいかな? の小さな島でして、
石切り場や銅精錬所がそのまま残る、近代産業の遺構の地となっております。



港の界隈は、綺麗に整備されております。向こうに見えるのは精錬所跡。

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迷路みたいな銅精錬所跡。レンガ造りの建物が、良い味出してます。

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老朽化につき、一部は立ち入り禁止になっています。

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雰囲気のある島でして、廃墟好きな人には堪らないのではないでしょうか。

海を渡った先で

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食事後、観光案内所で時刻表と観光パンフレットを貰い、
通り掛かった本屋さんに置いていた芸術祭の公式本を購入。
そして港への無料送迎バスの発着場所へと向かいました。
岡山駅から港までは結構な距離でして、バスで50分ぐらいかかったかな?
市街地から離れ、田んぼに囲まれた細い道を通り、
小さな住宅街にある駐車場に到着、バスを下車。
そこから五分ほど歩くと、小さな港に辿り着きました。

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犬島へはこれで二度目。三年ぶりになります。
その時も今回同様、目的は芸術祭参加作品を観に来たんですよね。
前に行った時に比べると小さな船に揺られて10分ばかり、
そうして日常からほんの少しだけ離れた小さな島、犬島に到着しました。

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