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我らが世界秩序

ダンスパフォーマンスを観てきました、「WORLD ORDER LIVE ~2012~」です。
動画サイトや海外で人気の、元格闘家須藤元気氏率いる、
個々でも固定ファンが付くレベルの実力派ダンサーが集まったダンスユニット。
観終わると、例の「あの」歩き方を真似したくなりますな。

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公演ポスターが無かったので、物販コーナーにあったCDポスター。

ゲリラ撮影だからこその、映像だからこその面白さがあるパフォーマンスなので、
舞台ではどうなるかなーと思っておりましたが、
ライブはライブ特有の迫力があって、こちらも非常に楽しめました。
「WORLD ORDER」から「MACHINE CIVILIZATION」への繋ぎは良かったな。
あと、野口氏かな?舞台で映える人ですね。
どちらかと言えば小柄で華奢な人かと思っておりましたが、
リアルでダンスを観るととてもダイナミックで、手足が長く見えます。
そして皆さん、スーツの着こなしが本当に素晴らしい。
スーツなんて誰でも着るものだから……と侮るなかれ。違うよ、マジで。
やっぱり、身体がしっかりと鍛えられているからなのかな?

海外で無表情だと言われ、機械みたいだと呆れられ、変だと笑われ、
それでもこうして黙々と働く皆さんのお陰で、日本の今日があるんだろうな。

「人を動かす事が出来るのは”お金”と、そして”感動”です」
須藤氏のこの言葉には、ある意味成程と思いました。
この所体調が思わしく無くて苛々して凹んでおりましたが、
素晴らしいパフォーマンスに感動し、元気を貰えました。
舞台って本当に素晴らしい。明日からまた頑張る。

トルコの姫君か

野田地図「THE BEE」、二度目の観劇をして参りました。
観劇した翌日、興奮冷めやらぬままに次の日の当日券を電話予約したのですが、
この公演では必ず当日券を用意しているようですね。実に有り難いです。
一番最後尾の端っこの席でしたが、距離はあれど、意外に観やすかったです。
やや小さめの劇場でしたが、個人的にはこの程度までの大きさが好き。
何より、この濃厚な芝居には、小さめのスペースの方が合ってますね。

予想していた通り、二度目の印象はまた随分と違って観る事が出来ました。
ストーリーを知っているだけに、前半のコミカル部分に笑えません。
野田演出の細やかな計算高さにも、改めて気付かされました。
そして、舞台上の嘘とあくまで抽象的に表現する、暴力の生々しさが凄い。
観る者の想像力に任せ、実際以上にエグく見せる演出は凄い。鳥肌が立ちます。
蜂、ラストシーン等、様々な解釈が出来るのも面白いですね。
どなたか、是非一緒に語り合いませんか。

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観終わった後、例の剣の舞の歌が頭に残ります。妙に笑えますが、何気に名曲。
久々にパンフも買いました。ついでに台本も購入しましたが、薄くてびっくり。
原作もかなり短く、原作の筒井氏が「こんな短編を芝居に?」と驚かれたそうです。
セットが全然違うという英語バージョンも、是非観たいですな。

ペルシャの女王か

舞台を観ました、野田地図公演「THE BEE」です。
筒井康隆氏の短編を元に作られ、初演の年には演劇賞を総なめにした作品。
海外ツアーを終え、待ちに待った国内ツアー&関西上演でした。

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いや、感動しました、びっくりした。すげえ。やっぱりこの人、天才だ。
観終わった後、手が震えたのは久しぶり。席から離れる時、足元ふらつきました。
帰りの電車の中、呆然としていました。久々に、魂持って行かれました。

音楽のコントラスト、紙を使ったセット、鉛筆や割りばしの小道具、
蜂の象徴性等、計算された演出が、どれも非常に効果的に使われています。
観る者の想像力をかき立てるような、舞台ならではの演出は流石。
ラストシーンには、言いようのないショックを受けました。
この人、なんでこんな事を考え付くんだろう……ほんと、すごいよ。
氏の作品を観ると、舞台という空間の無限の可能性を、改めて思い知らされます。
物語的には間違いなく苦手な部類なのですが、もう一度観たいと思いました。
二度目、三度目で、また印象が変わりそうな舞台ですね。

尚、宮沢りえ女史の脚線美は素晴らしかった。マジ素晴らしかった。
そして野田さん、ホンマ頼みますから、関西公演をもっと増やして下さい。
現在日本を代表する演出家の一人なのに、首都圏でしか上演しない公演多過ぎ。
大地抉れるくらい土下座しますから、もっと関西圏にも来て下さい。
そして「贋作・桜の森~」の再演、私が死ぬまでに是非とも、是非とも……っ。

犬の密偵がツボ

劇団新感線公演、いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」を観劇。

今回は主役に藤原竜也と永作博美を迎えた、豪華なキャスティング。
永作さんの舞台は初めて見ましたが、思った以上に良かったな。
藤原氏の安定感は、相変わらず文句なし。良い役者さんです。
本作での彼の役どころは、微妙に「身毒丸」と被りました。
重箱の隅をつつくような事を言えば、チャンバラ慣れすることを推奨します。

派手な舞台で充分楽しめましたが、話の展開に救いが無く、
女の立場的にも、見ていてなんだか苦しくなりました。
新感線って、たまにこの手の暗重いテーマの舞台をしますよね。
そう言えば、この世界観は、以前上演した「蛮幽鬼」と同じなのかな?
ローラン族って、他の公演でも出ていたっけ?

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次は「五右衛門ロック」との事。やったー、このシリーズ好き!
きっとまたギンギンにロックの生演奏を効かせた
痛快アクション舞台になりそうで、今からすっごく楽しみです!

上方漫才江戸落語

上京の際、落語小屋「新宿末廣亭」にて、落語観賞して参りました。
折角お江戸に来たし、一度は足を運んでみたかったのです。

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昼公演を聴きに行きましたが、時間にしてざっと四時間半。長いな。
途中でダレるかもと思いきや、そこは流石の伝統芸能、
合間に絶妙なタイミングで漫談や奇術や曲芸などが混じり、
飽きさせない見事な構成になっています。きちんと考えられております。

後半になるにつれて出演者が大御所さんになるので、
途中入場するお客さんも多いですね。出入りが結構激しいです。
各自が思い思いに好きなように参加できるのも、楽しみ方の一つかな。
チケットも、当日三十分前に窓口ですんなりと購入できました。
案外大阪の天満天神繁昌亭よりも、気軽に鑑賞できるのかも。

幕の内弁当を食べながら、お菓子をつまみながら、お茶を飲みながら、
足が疲れたら、劇場に借りた膝掛けの下、シートの上で三角座りしながら。
畏まらずに、のんびり、ゆるーく、気さくに楽しめました。
落語を聞いていると、意外にも日本語の綺麗さを再認識します。
聞き手側にも知性を要求する、誇るべき笑いの文化ですな。

花形役者揃い踏

歌舞伎を観劇、演目は「義経千本桜・すし屋」と「研辰の討たれ」。
今をときめく花形若手衆が揃った、なかなかに贅沢な舞台ですな。
たまに行くバールの店長さんにお勧めされて足を運んだのですが、
彼の観た昼公演のチケットが取れず、夜公演を観ました。

「義経…」はお馴染みの古典歌舞伎の一幕ですね。
これは、「義経~」がどう言った話かを知らないと、ちょっと厳しいかも。
「研辰…」は喜劇。これはとっても楽しめました。
それにしても、市川染五郎氏は凄いですね。
以前にもびっくりした事がありましたが、とにかく動きが巧み。
舞台役者にとって、これはもの凄い武器だろうな。
昔出演した劇団新感線の「朧の森…」役の印象が強いからかも知れませんが、
口先が上手くて小賢しい役どころがハマりますね。これ、褒め言葉です。
また、新感線に出演しないかなあ。こっそり待っております。

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昼公演は、一、二幕とも喜劇を意識した舞台だったそうです。
二幕目が面白そうだったので幕見席を狙っていたのですが、
残念ながら完売しちゃっておりました。幕見席数、少ないよう。

網タイツとヒール

いのうえひでのり氏演出の舞台、「ロッキーホラーショー」を観劇しました。
B級カルト映画のアイコン的作品ですね。エログロナンセンスの古典。
参加型劇場映画としても有名で、一度ミニシアターに見に行った事があります。
果たして舞台ではどうなんだろうか…と思っておりましたが、
案の定、ペンライトやクラッカー持参の観客が結構いらっしゃいました。
多分、映画を知っている人の方が、より楽しめる舞台でしょうね。

演出氏のこの作品に対する愛情とこだわりが見え隠れして、
ロッキーファンとしても充分満足できる舞台となっていたと思います。
古田氏は相変わらずの役者っぷりを発揮。良い声しているよー。
唯一、コロンビアのタップダンスが無かったのは残念かな。

帰り道、後ろを歩く女の子二人が「意味が判らない」と話をしておりましたが、
これはノリと勢いと音楽で突っ切る作品なので、意味を求めるのは寧ろ野暮。
ストーリーなんてあってないようなものです。いや、マジで。

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そして、ものすっごい超個人的感想。
上演前や休憩時間に流す館内音楽って、誰の選曲だったんだろう。演出氏?
選曲した方と、酒でも飲みながら一度じっくり語り合いたいです。
きっと、凄くディープで、美味しいお酒になる気がするんだよな。

名将か愚将か

久しぶりに映画を見に行きました、「聯合艦隊司令長官 山本五十六」です。
太平洋戦争辺りの歴史の、少しでも参考になればと思いまして。はい。

全体的にBGMも控え目だったのかな?静かな映画、という印象。
戦争というテーマに反して、派手さはありません。
ヒューマニズムは抑え気味に、淡々と進む展開は好感が持てました。
彼の関わった戦争の流れも、判り安く理解できます。
役所氏演じる山本五十六は、寡黙で、穏やかで、実直で、
余りにも理想的な司令官過ぎて、ちょっと出来過ぎな気もしますね。
個人的には、もうちょっとお茶目キャラなイメージを持っていたのですよ。
後半のマスコミの変わり身の早さに、こまつ座の某舞台を思い出しました。
今も昔も変わり無いんでしょうね、多分。

ちなみに、ラストのテーマソングは音楽だけの方が良くないか?
いっそ本編で役所氏が歌っていたものを推奨しますが、如何でしょうか。

女王様はソッチ系

本日、狂言風オペラ「魔笛」を観劇。
日独交流150周年記念事業のひとつ、とされていたみたいですね。
とは言えこのコラボは定期的に開催されていて、
今までずーっと気になっていたのですよ。

ちなみに今回初めて知りましたが、このモーツァルト作曲の作品、
当時の脚本に「王子は日本の狩衣を着ていた」とあるそうですね。
着物ではなく狩衣指定とは、モーツァルトさん、渋いチョイスだな。

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オペラどころかクラシックは今まで一度も観た事がないので、
解るかな…と心配しておりましたが、いやいや充分楽しめました。
オペラの話を、オーケストラをBGMに、狂言で演じた…てな感じだな。
狂言だけにそこここに笑いが取り込まれ、
言い回しも現代風なので聞き取りやすく、今時のユーモアも織り交ぜ、
寧ろ普通の狂言以上にとっつきやすかったです。
鼓とオーケストラの演奏も耳に心地よく、要所を引き締める能役者や、
そして時々演者と絡む奏者さん達も楽しかった。
何より、役者陣の安定感が素晴らしく、観ていて安心します。
これ、知名度が低いのが、すっごく勿体無いなあ。
狂言やオペラを知らない層や子供にも、是非観て頂きたい舞台だよ。
先立って行われたドイツ公演でも、好評だったみたいですね。

伝統を大切に守りつつ、次の世代へ繋げる責任を負いつつ、
新しい事に挑戦し続ける古典芸能の方々には、本当に頭が下がります。
これからも、素晴らしい舞台を期待しております。

毒の中にも母が

キャストを一新した蜷川幸雄演出「身毒丸」を観劇。
これ以上は無いとも言われる白石&藤原キャストに感動したクチですが、
大竹しのぶ女史の配役には非常に興味がありました。
尚、今回はキモイ程語るので、要注意。

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大竹撫子は瑞々しく、しなやかで、「女」としての撫子を、
流石の演技力と貫禄で見事に演じ切っておりました。
白石撫子が残酷なまでに母性溢れる「母親」なのに対し、
大竹撫子はまだ若々しい「女性」だな。これは演出の違いでしょう。
新人の身毒丸は、やや弱くて滑舌が気になりましたが、
それでも初舞台でここまで頑張れば立派。
ただ、これはあくまで脇を固める役者陣がしっかりしていたことと、
バランス感覚の良い大竹女史が相手役だった事も要因。
あと、個人的に身毒丸のイメージは、華奢で、線が細く、
「男」になる前の中性的で小柄なイメージを持っていたので、
声が低くて長身の彼に、ちょっと違和感を感じました。

演出も微妙に変わっていて、特にラストには衝撃を受けました。
今までの「その後の二人の行方は、誰も知らない」的なものに対し、
今回は行きつく所まで行っちゃった感じ。原作により近くしたのかな?
あと穴のシーン。「母」達が半狂乱に我が子を探すシーンが無くなりました。
あれにぞっとしただけに、少々残念。

しかし、今回の舞台を観ると、
改めて白石&藤原コンビが如何に突出して特別だったのか解りますな。
白石女史の、登場した瞬間に空気が変わるあの存在感は他では得られないし、
そんな彼女に食らいついて行ける配役は藤原氏しか思い当たらない。
あの、皮膚の毛穴からじわじわと侵食されるような麻薬的な空気とか、
抱き合っているだけなのに観ていて居たたまれなくなるような猥褻感とか、
艶めかしく、背徳感溢れる、禁断の「素敵な悪夢、寺山ワールド」は、
やはりあの二人だからこそ成し得たのでしょう。

ただ、これだけ言っているけど、舞台に関しては総じて高評価。
完成度は高く、このキャストしか知らない人は、充分な見応えがあるでしょう。
特に大竹女史には、この役を引き受けた勇気だけでも拍手を送りたい。

おまけ。劇場内のバーカウンター。

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舞台に合わせた特別メニュー。
こんなのがあるんですね。面白いな。

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