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海岸沿いアート

013瀬戸内国際芸術祭旅行

ベネッセハウスを出て、海岸沿いに歩いて行くと、
途中で数々の屋外アートが設置されております。
最も有名なのが、草間彌生女史の黄色い水玉どてかぼちゃ。
最初見た時は「なんで海岸にかぼちゃ?(笑)」と思いましたが、
今や、直島のアイコン的存在ですね。これはこれで愛らしいです。
途中、直島のグッズショップもありました。
ここでしか買えない、人気のかぼちゃグッズがいっぱいなのだ。

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この海岸ルート、あちこちにアート作品が点在しております。
道沿いにあるものを駈け足にしか鑑賞できませんでしたが、
ゆっくり全てを見て回るとなれば、丸一日かかりそうですね。

勿論安藤氏設計

013瀬戸内国際芸術祭旅行

地中美術館の次は、シャトルバスに乗って、ベネッセハウスミュージアムへ。
ホテルを併設したこの美術館は、現代アートを中心に展示されており、
リゾートホテルも隣接されていて、海外でも知名度の高いスポット。
開放的な建物には、非常にバラエティに富んだ作品が展示されていて、
個人的には柳氏の「バンザイ・コーナー」を見た時は吹き出してしまいました。
現代アートのこんな型破りでなんでもアリな所は、結構好きなんですよね。

館内のミュージアムショップと併設したカフェがありまして、
折角なのでここのランチでも……と思ったのですが、
残念ながら既のに本日の日替わりランチは完売。ま、時間が遅かったしね。
他のメニューがどれもイマイチピンとこなかったので、
まあ仕方無い、お昼ご飯は次の移動エリアで食べるかと美術館を出ました。

地中迷宮美術館

013瀬戸内国際芸術祭旅行

さて、折角なので地中美術館のご案内を。
その名の通りこの美術館、建物は地中に建設されておりまして、
一見外観は見当たらず、しかし作品は全て自然光で閲覧出来ると言う
他の美術館では見られない非常にユニークな建築をしております。
美術館の設計は、最早直島にこの人ありきの安藤忠雄氏が、
それぞれの展示作品の作家やキューレターと意見交換しつつ手掛けました。
そしてここにある作品は、恒久展示の三作家の九作のみ。

クロード・モネ(睡蓮シリーズ、五作品)
ジェームズ・タレル(オープンフィールド&オープンスカイ&他一作品)
ウォルター・デ・マリア(タイム/タイムレス/ノータイム)
それにプラス、安藤氏手掛けるこの建物も、一作品に加わりそうですね。

空から見下ろせば、地中に丸や三角や長細い建物がチラ見えしますが、
基本それらの建物一つに一作の作品を設置するという、
なんとも大胆で贅沢な展示方法を採用しております。
世界的にも有名なモネの睡蓮を呼び水にしたこの美術館、
でもそれ以外の作品も、それに劣らず印象深いものばかりです。
興味深い建築物とも相まって、アトラクション気分で楽しめました。

尚、地中美術館は入館するにも整理券が必要でしたが、
展示物を鑑賞するにも入場制限があったりしますので要注意。
でも、モネの睡蓮を展示していた部屋では、偶然にも人の入れ替わりに被り、
常在する美術館スタッフ一人を除き、まるっと一人きりの空間で
作品を鑑賞するタイミングを得ることが出来ました。入館制限故の幸運だな。
世界的な名画を一人占めした気分を味わえて、すんごい贅沢気分でした。

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入り口の近辺には、睡蓮のモデルともなったモネの庭を再現した池があります。

作品との一体化

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李禹煥美術館を堪能した後は、来た道を戻って地中美術館へ。
……って、すいません。本当の所、地中美術館に大した予備知識は無く、
有名なモネの作品があって、直島では人気があるくらいの認識のみでした。
なので、お安くは無い入館料金と可愛くは無い待ち時間を目にした時、
いっそここはスルーしようかなーとの考えも過ぎっておりました。
でもまあ、折角来たし、再び直島に旅行に来る保証も無いし、
話題とかネタ的な意味でも見てくるかー……な気分で足を運びました。

いや、すっごい良かった。
入館前までの自分を、往復ビンタしてやりたくなりました。
こんな美術館を作った福武財団を、本気ですげえと思いました。

何が凄いって、内部にある珠玉の作品群も勿論ですが、
ひとつの作品に一つの建物という芸術を極めるような贅沢さといい、
それぞれの作品を最大限に生かした空間の作り方といい、
そのスケールといい、コンセプトといい、潔さと思い切りの良さといい、
なんかもう、いろんな意味で衝撃を受けました。

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お金持ちってすごい。そして、その使い方を知っているってすごい。
企画者が本当の意味で芸術を理解していることが伝わって来ます。
こんなお金持ちが存在してて良かったなあと、変な感動をしました。

ミュージアム地区

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港のコインロッカーに荷物を預け、バスに乗りました。
直島は、ざっと大まかに区別すれば見所は三か所に分かれます。
ひとつはこの港を中心とした、宮浦エリア。
そして最初に向うのは、余りにも有名なベネッセハウスエリアです。

港から5分程でバスを下車すると、そこは人気の地中美術館受付口。
入館整理券を貰ったのですが、入館可能時間まで40分程あるので、
先にそこから歩いて20分程の距離にある、李禹煥美術館に行きました。

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李禹煥氏は、現代美術の「もの派」として名高い韓国出身アーティスト。
そしてこの個人美術館の設計は、日本屈指の建築家安藤忠雄氏です。
氏の作品の為だけに作られた特別な空間は、なんとも贅沢で、
こりゃアーティストとして本望だろうな。
氏の作品を目にするのはこれが初めてでしたが、なんとなく、
「外国人が見た禅」のイメージってこんな感じなのかなーと思いました。

中にも入れます

013瀬戸内国際芸術祭旅行

電車を降りて駅から歩いて五分程の場所に、宇野港があります。
その移動中、ぱらぱらと雨が降り出して来ました。あちゃー。
前日の犬島では、やたら天気が良くて夏並みに暑かったんですけどね。
尤もそのお陰で、夜になっても冷えなかったのは幸いでした。
でも実はその前日は、台風で公演中止になるか否かの瀬戸際だった模様。

さて、港からフェリーに乗って、20分ぐらいかな。
到着したのは、アートの島として名高い直島です。

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直島の玄関口の一つ宮浦港では、赤いカボチャがお出迎えしてくれます。

車内は全部これ

013瀬戸内国際芸術祭旅行

二日目(岡山~直島~高松)

ゆっくりお風呂に入ったお陰か、早めの時間にすっきり目覚め、
出掛ける準備も捗ったので、予定よりも一本早い電車に乗る事に。
駅前のパン屋さんにて急いで朝御飯を食べて、電車に乗り込みました。

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乗り換えが一度ありましたが、乗り換えた電車内の広告が芸術祭仕様。
アラーキーこと荒木経惟氏のゴシックな写真の吊り広告です。

何処の子たちだ

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のんびり屋台村を見て回って、ステージを楽しんで、さてそろそろ出港。

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野外劇場から港まで、徒歩15分ぐらの距離があったので、
グループごとに固まって皆で夜道を移動していると、
精錬所の長い煙突がライトアップされておりました。
多分、この時期だけ。道案内していた運営スタッフさんも驚いてたな。
それにしても、維新派さんの運営さんって相当大変だろうな……。

犬島からフェリーとバスを乗り継ぎ、そして岡山駅に到着。
共同風呂&トイレの安い宿を予約しておりましたが、
受付すると、「予約した部屋じゃないけれど、こっちの部屋をどうぞ」と、
洗い場付きの広めの独立風呂&トイレ付きの、
広い部屋を案内して頂きました。おおお、ラッキーだ。
もしかするとここ、長期滞在用のホテル&部屋だったのかな?
キッチンのないワンルームマンションみたいな部屋だったぞ。
お湯を張った広い湯船にゆっくり浸かって、体の疲れが取れました。

がやがや楽しい

013瀬戸内国際芸術祭旅行

維新派の野外公演の名物は、なんといっても屋台村でしょう。
特設会場の隣に、物販や屋台、ミニステージ等を設置するのですが、
ちょっとしたお祭りのような雰囲気になります。
なので実はこの劇団の野外公演、上演中は飲食オッケーなんですよね。

今回の公演終了後、夕食代りに食べたのは、スペアリブサンド。
食パンでリブを挟んだ簡単なものですが、とろとろのお肉が美味しかったな。
美味しそうなものが沢山あるので、いつも目移りしてしまいます。

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離島である犬島での公演では、バスとフェリーでの送迎がありますが、
帰りの便は島到着後に時間の予約をして、そのグループごとに移動となります。
一番早い便のフェリー&バスは直ぐに予約が埋まっておりましたが、
でも、ステージでパフォーマンスもあるし、屋台村で充分楽しめるし、
時間に余裕がある人は、遅めの便で帰る方をお勧めします。

そこはどこですか

013瀬戸内国際芸術祭旅行

のんびり探索していたらもうこんな時間! 案内の人に場所を聞いて、
慌てて走って向かったのが、島の海水浴場に設置された特別野外舞台。
今回の芸術祭参加作品の切欠でもあり最大の目的でもある、
劇団維新派公演「MAREBITO」の公演会場です。

すいません、今回は長々と語ります。

劇団維新派とは、松本雄吉氏が率いる関西を拠点とする劇団でして、
劇団員が自ら巨大な屋外舞台を建設し、解体する、大がかりな公演でも有名。
「喋らない台詞、歌わない音楽、踊らない踊り」とも称される独特の演出は、
不条理系ともアングラともまた違う、寺山修司以上に特殊で、
内容の説明が非常に難しい、不思議な舞台を作り上げます。
自分の中で、維新派を見て強く感じたのは、以下の二言。↓

想像力の概念を根底から覆されます。
才能という言葉に打ちのめされます。

自分の中で、頭の中を覗かせて欲しい人筆頭が、実はこちらの演出家松本氏。
場に居合わせ、空気を共有し、体感するこちらは、DVDでは決して理解出来ない、
劇団が消滅すれば再現不可となるであろう、ある意味唯一無二の舞台。
万人にはお勧めできませんが、時代に居合わせた自分は幸運だと思います。
恐らく、伝説になる劇団ですね。

さて、そんな劇団維新派。基本的に物語性の強い作品が好みの自分としては、
維新派に関しては実はかなり当たり外れがあったりします。
今回は芸術祭とポスターの美しさに惹かれて重い腰を上げたのですが、
正直、予想以上に大当たりでした。久しぶりにツボに来たぞ。

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まるでフォトフレームに収められた写真のように、美しい舞台美術。
舞台は空のまだ明るい夕方から始まり、月の輝く夜闇の中で終演。
時間帯、舞台設置場所や背景、月と星、桟橋等々、全てが計算されていて、
この緻密さと大掛かりさは流石野外公演ならではですな。

本作品は、幾度となく公演場所となった、この犬島に対するオマージュですね。
何処までも一際白い透明感、奥行きのある幻想空間、海の向こうの母、
海からやってきた少女、息を止めて会話をする、卵生への生まれ変わり、
宇宙を泳ぐ、縄文人の小柄な男性の骨、太古は陸であった海、戦闘機、
目の覚めるような青い海、そして流れてきたのは果たして……?

ストーリー性が高い作品でないにも拘らず、すごく惹きつけられました。
このノスタルジックで、切ないまでに透き通った世界観は、
恐らく維新派でしか味わえないんですよね。
途中足元に張られた水が、照明で真っ青になる演出には、おお、と思いました。
不思議な喧騒感のある舞台なのですが、最後に残るのは痛い程の静寂の余韻。
いやあ、感動した。来て良かった。素晴らしい。良い舞台に巡り合えました。
でも何に感動したのかと問われれば、口で上手く説明できないんだよな。
圧倒され、衝撃を受け、自分の中の感受性を揺さぶられる、そんな感じ。
多分、維新派を知っている人なら、お解り頂けるのではなかろうか。

「維新派の野外公演は、旅をする時から始まる」とも言われております。
電車やバスを乗り継いで、フェリーに乗って、島に足を踏み入れて、
日常とは違う別の世界へのトリップこそが、維新派の狙いなのでしょうね。

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